アフガニスタンの議会で、女性蔑視の極みともいえる新法案が成立されようとしている。その内容は、女性が証人となることを禁止する法案だ。国内の少数派であるイスラム教シーア派の独自性を認めるものとして提出されたこの法案だが、実質的に女性からすべての権利を奪う結果となりそうだ。(オルタナS特派員=伊藤由姫)
1996年から2001年まで、アフガニスタンの大部分を実行支配していたタリバン政権。その政権下での女性の人権は、全て剥奪されていた。
家の外で仕事をすること、マーラム(父、兄弟、または夫などの近い男性の氏族)に付き添われていない場合の外出、マーラム以外の男性と接触すること、教育を受けることなど全て禁止し、規定に従わない場合は、鞭打ちや殴打といった暴力による刑が適用される。
このように、絶対的イスラム国家であったタリバン政権が強いた女性の厳しい環境は、ターリバーン政権崩壊後も続いている。近年、カルザイ政権によって、わずかながら女性の社会進出も認められた実績もあり、アフガニスタンにおける世俗化は一定程度進んだとみなされていた。
そんな中、今回の新法案が成立された場合、改善の兆しがみえていたアフガニスタン女性に対する境遇は、今以上に厳しいものになるだろう。
アフガニスタン女性が生活の中で出会うことが出来るのは、ほとんどの場合マーラムだけである。
つまり、家庭内暴力や「名誉殺人」が増加しているアフガニスタンにおいて、女性が証人となることを禁止した場合、マーラムを訴える権利を女性から剥奪することによって、実質的に女性に対する暴力が許可されるのだ。
この驚きの新法案に対し、多くの組織や団体が反対運動を行っている。世界中のさまざまな問題に対してグローバルな意思決定がなされるように活動するグローバルオンラインコミュニティAVAAZは、女性蔑視の法案を阻止しようと、オンラインで署名を集め、100万人以上が現在集まっている。米・オバマ大統領も「忌まわしい」とコメントしている。
カルザイ大統領は、このような新法案に対する国際社会からの批判を受け、4日、憲法に違反する内容があれば法案を差し戻すと表明した。