宮城県石巻市牡鹿半島。リアス式海岸がここから北にのび、山と海に囲まれた土地だ。その沖合いは世界三大漁場ともよばれ、沿岸には漁業を営む浜が並んでいる。(文・写真=福地 波宇郎)

旗を立て花嫁を迎えに行く漁船

昨年三月、その浜の一つ、狐崎浜に一組の若いカップルが移住した。ともに芸術家の富松篤(32)さんと太田和美さん(29)だ。和美さんは仙台出身で稲荷様を祭る竹駒神社総代の家系でもある。

そして半島の侍浜と狐崎浜の二つの浜には竹駒神社から分霊されたという稲荷神社がある。この狐尽くしも何かの縁、そこで「狐の嫁入り行列」をテーマとした結婚披露式を執り行うこととした。

昔、まだ道路が整備されていない時代、狐崎に嫁ぐ花嫁は嫁ぎ先へ家財道具を船で運び、結婚の儀を行なったという話を聞き、これも今に再現したいと考えた。

狐に扮し侍浜から海を渡る両家一同

6月24日、親族友人80名の参列者も手作りの狐のお面をかぶり、侍浜から狐崎浜へと船で渡ると浜を嫁入り行列で練り歩いた。

ともに生活する浜の漁師たちも2人のためにこころよく漁船を出し、「この浜にも新しい風がふいたようで、まったくめでたい」と口々に祝福した。夜には和美さんが働く「民宿めぐろ」で盛大な宴も催された。

住民に迎えられ狐崎浜での狐の嫁入り行列

震災後、人口流出や高齢化、防潮堤建設などが続く牡鹿半島では内外からの人たちが現状をなんとかしようと行動を開始している。そんな中、独創性にあふれながらも、どこかなつかしい二人の嫁入り行列は明るい話題となり、浜は終日笑顔につつまれた。

狐崎浜の神社へ挨拶をすませた二人

・新婦の太田和美さんはアーティストとして牡鹿半島特産の「ホヤ」をテーマにした創作活動を続けています。「HOYAPAI」fbページ

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