観光ではなく仕事体験を売り物にした、新しい形の「旅」が人気だ。パイロットや芸者などの特殊な業界から、花屋やカフェオーナーなど身近なモノまで常時30種類以上の中から自分の好きな仕事を1日1~5万円で体験できる。
このサービスを提供しているのは合同会社仕事旅行社(東京都品川区)。田中翼代表はサラリーマン時代、知人の会社を訪問して衝撃を受けた。
「僕は新卒入社した金融業界の企業しか知らなかった。知人の会社は体験ギフトを提供するベンチャー企業で、オフィスや冗談から出たアイデアをすぐに商品化する社内風土がかっこ良かった。今までの『仕事は辛くて大変な事』という価値観を一蹴された」。
そこで、もっと気軽に色んな会社を見たり、仕事を体験できたりするサービスがあれば面白いと考えた。自分が感じた驚きや感動をみんなとシェアしたいと思い、このサービスを始めたという。現在は個人向けのサービスだが、将来的には社内研修としての提供も視野に入れている。
寿司職人になる旅は、東京・江戸川橋にある「酢飯屋」で体験ができる。朝は築地での魚の仕入れ風景や仕込み方法を見学しながら、寿司について学ぶ。夜は友達を「酢飯屋」に招待し、自分が握った寿司を振舞う。
2011年4月のスタートからのべ100人が旅立った。体験者は20~30代が中心で7割が女性だ。転職前に仕事を試したいという理由のほかに、非日常を味わいたい、叶えられなかった夢を体験したいという声もある。
「大きい会社に入れば安心」の時代が終わった今、若者たちは自分の適性を見極める大人の仕事体験に意義を感じているようだ。(オルタナS特派員=中川真弓)