「誰かの役に立ちたい」「社会貢献がしたい」。2011年3月11日に発災した東日本大震災をきっかけに、実際には会ったことのない被災地の人々に思いを馳せ、少しでも彼らの力になりたいと行動した人は多いのではないだろうか。発災後の「がんばろう日本」「ひとつになろう」というメッセージは、人々の日常生活に見知らぬ他者との連帯感を生み出した。なぜ人は見知らぬ他者のために行動し、貢献したいと考えるのか。
本書は「他人にかかわろうとする人は、自分が幸せであると考える傾向がある」という仮説をもとに、人々の「かかわり」への意欲と幸福度の関係に迫る。
◆幸せになるかかわりへの意欲=SQ(Social Quotient)
著者は幸福度を高めるような他者へのかかわりの力を「SQ」という指数で表している。著者が実施した全国一万人調査によると、SQ度の高い人は、身近なところから行動や消費を通じて社会貢献を実践し、他者とのかかわりを持つことにも積極的であるということが判明した。SQ度を高める4つの要素は「他者への貢献」「広範囲で協力」「モノより心」「次世代志向」であり、加えて「できる範囲での手助け」が重要だ。自己犠牲的な貢献ではなく、お互いに協力関係を築きたいという考えが基礎となっている。
東日本大震災の発災以前には、「孤独死」や「無縁社会」など、人間関係の希薄化や他者への無関心が取りざたされていたが、他者に貢献したいと考えていた人は少なくはなかったはずだ。著者は手助けを必要としている人と貢献したいと考えている人を結びつける「仕掛け」として「顔見知りの他人」を生活の中に増やしていくことが必要だと言う。SQ的なかかわりが「いざ」というときの助けになるかもしれない。(オルタナS特派員=高橋豊美)
『SQ “かかわり”の知能指数』(鈴木謙介著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)(税込1575円)