「想像以上に田舎だった」初めてこの地を訪れた誰もがこう口をそろえる福島県いわき市田人町(たびとまち)。この山あいの町で一つのプロジェクトが動き始めました。

その名も『「さいこうの、夏」―PASS FOR 2014 PROJECT―』。これは東日本大震災以降、開催が滞っている田人町の伝統的なお祭り「黒田不動尊祭典」を2014年の夏に、再興させるプロジェクトです。

このプロジェクト名の「さいこうの、夏」には「再興」と「最高」の2つの意味を秘められており、「PASS」には、「次世代へ伝統芸能をつなぐ」という決意が込められています。

このお祭りは、「満照寺」という、この町唯一のお寺で毎年8月下旬に開催されてきました。お祭りの主役は、地元の人々によって奉納される「念仏太鼓」「獅子舞」「棒術」の伝統芸能。

お祭りと共に長い歴史を持ち、いわき市の無形文化財に指定されています。ところが、2011年に起こった東日本大震災の影響でお寺が被害を受け、同年のお祭りの開催は中止となってしまいました。

もともと、伝統芸能の保存・継承を担ってきた黒田芸能保存会員の高齢化と担い手の不足が懸念されていたこのお祭り。震災の被害が修復された後も、担い手がいないという理由で中止になってしまいました。

TEAM iups(以下、iups)メンバーの私(小宅優美・筑大3年)は田人町出身。お祭が開催されていない状況をみて田人がどんどん寂しい場所になっていってしまう、と焦りを覚えました。誰もやらないなら自分たちからやってしまえばいい。今年の4月から黒田伝統芸能保存会とiupsが本格的に手を組み、プロジェクトスタートの第一歩を踏み出すことができました。

私たちの第一の目標は伝統芸能の担い手を確保すること。プロジェクト始動をPRするために、6月7日に地元の田人第一小学校にお邪魔して、私たちの活動について説明をしてきました。小学校の体育館には、お隣の田人中学校の生徒のみんなも集まってくれ、約60人の小中学生(なんと二つの学校を合わせた全校生徒数!)が話を聞いてくれました。

約60人もの生徒を前に、プロジェクトの説明をするメンバー小宅の様子

お祭りのことは知っていても、なぜ開催が止まってしまっているのか、保存会がどんなことをしているのかは、普段はなかなか知ることができません。プロジェクトの背景についても理解できるような説明を心がけました。田人の子どもたちの礼儀正しさは折り紙つき。小学校低学年から中学3年生まで、真剣に話を聞いてくれました。

小宅の質問に答える小学生。照れながらもしっかりと回答してくれた

3人で披露する「棒術」の大技。迫力のある技に会場は緊張感に包まれた

さらに、この日は以前「棒術」の担い手を務めていた地元の方3人がいらしてくださり、生徒たちの前で技を披露して下さいました。長年、棒術の担い手を務めていたこともあり迫力満点。篠笛の生演奏もあり、臨場感漂うステージとなりました。

説明会終了後、一部の小学生が「獅子舞と刀を間近で見てみたい」と話しかけてくれました。年季の入った獅子頭と刀、六尺棒に子どもたちは大興奮。興味津津に実物に触れていました。「このみんなとお祭りをできたら楽しいだろうな」と来年の夏への想像がふくらみました。

説明会後、棒に触れる生徒たちの様子。棒を前に沢山の列をなしていた

たくさんの方々の協力を経て、説明会は無事に実施できましたが、本番はこれから。実際に田人に関わる多くの方々にお会いし、「プロジェクトの成功に向けて頑張らねば!」と気が引き締まりました。それと同時に、一日を通して出会った田人の皆さんとの交流を通して、「やっぱり私は田人を好きなんだな」と改めて実感しました。

プロジェクト・ポスターを持つ、芸能保存会の皆さんと、メンバーの西丸・小宅

目指すところは2014年夏の黒田不動尊祭典の復活です。クリアしなければならない課題はたくさんありますが、何よりも田人の人が楽しんでお祭りに関われるように、お祭りに関わる人々の「さいこうの夏」をつくれるように、私たち自身も楽しみながらプロジェクトを進行していきます。

因みに伝統芸能の担い手は、いつでもどなたでも募集しております。詳しくはホームページをご覧ください。皆様のご支援とご協力のほど、よろしくお願いします!(寄稿・小宅優美)


TEAM iups(アイ・アップス)
2010年に福島出身の在京者で設立された任意団体。福島県出身の在京者が「地元外」からの視点で楽しく福島について考える場や機会を創造する活動をしています。物理的に距離が離れた場所から地元と当たり前に関わり、それを「趣味化」させることを目的としています。代表は西丸亮(中央大学大学院)。http://www.teamiups.com