――人材育成を共同で行うメリットは。

和泉:経験を共有する仲間ができることです。今年は参加企業のうち6社から10人の新入社員が集まりました。入社式までの間、内定者は全ての社長から会社の理念を聞き、モチベーションを高め、入社後は、個々の社長の工夫を凝らした新人研修を受けます。

たとえば、1カ月の給料分の1万円札を並べて、お客様や先輩の社員など多くの人のお蔭で給料を頂けることを学んだり、大根の上に15キログラムの金型を落とし、粉々になった姿を見ることで作業の危険性を実感したりします。

さまざま企業の社長から仕事について教えてもらうことで、自社への理解も深まります。また、つらいことがあっても、自社だけでなく他社の仲間や年齢の近い先輩とも励ましあえるので、新入社員の定着にもつながります。

――目指す「ものづくり」は。

和泉:ものづくりに携わる人は実際に『モノ』を作っているのに、クリエイティブとは言われないことに以前から疑問を持っていたが、東日本大震災から1カ月後に被災地に行き、考え方が大きく変わりました。

津波で何もなくなった空間を目の当たりにし、建物の復旧はできるが、復興は多くの人の生活が成り立ってこそだと痛感しました。ものづくり関係者は、テクノロジーやプロダクション、エンジニアリングのみに埋没するのではなく、『一緒に仕事を作ってこそクリエイティブなものづくりなのだ』と。

被災した酒屋の試飲イベントを開いたり被災地の企業と一緒に展示会に出展したりと、受注や雇用を生みだすお手伝いをしています。また震災復興支援として、被災した子どもたちの未来を願い『ホワイト&イエローリボンバッジ』というピンバッジを作り、収益の一部を福島県で子どもたちが演劇を行う団体に寄付しています。土地の歴史や産業構造、今後の未来も見据えた『クリエイティブなものづくり』を目指したいです。

――今後の指針は。

和泉:海外受注が増えることで国内の仕事は減少していきます。国内で仕事を奪い合うのではなく、お客様や他社の抱える問題を追究し、新たなニーズを発掘していく必要があります。決められた作業のみに没頭せず、他社から刺激を受け、お客様の生活が豊かになったり便利になったりする製品をつくりたいです。

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