中山間地域の耕作放棄地・高齢化の課題をオープンイノベーションで解決する取り組みが始まる。仕掛けているのは、太陽光発電開発事業を行うGreenT（グリーンティ・東京・世田谷）。山梨県北杜市笹尾にある約６０００㎡の山林と農地で、農×福祉×ソーラー発電のエコビレッジ計画が動き出す。（オルタナS副編集長＝池田 真隆）
太陽光パネルの下で栽培
同社は、この計画を進めるにあたり地元の雇用を優先し、同市を地方再生事業のモデル地と位置づける。舞台となるのは、約６０００㎡の耕作放棄地。同地はエコと福祉に感心のある行政を含む太陽光発電事業者や高齢者福祉施設、身体障害施設、保育園などに有利な条件で分譲される。
太陽光発電施設や建物には様々な工夫がある。太陽光発電施設は、土地を掘って設営する地下茎単管パイプ方式で建設される。パネルを含む全ての部材は発電業者の依頼があればいつでも同社が引き取るようになっている。
コンクリートは一切使わないで、外観をソフトにするために周囲には生垣を植えた。自然をなるべく残すように起伏のある土地を生かして架台設置をした。北杜市は日照時間が長く太陽光発電に有利、市としても太陽光発電推進に力を入れていることも追い風だ。
スマートシティへ第一歩
同市の高齢化率は28％（２００５年）で、福祉施設に入居を希望する人は増えている。しかし、同市にある福祉施設は満員状態。そこで、高齢者施設を同地の北側に建設する。
建物は全て木造でソーラー施設の為に伐採された材木をリサイクルで活用した。施設の電気は太陽光の発電でまかなわれるが、電気を大量に消費する熱源は太陽熱が使われる。地下水を利用した鉱泉は24時間、適温にたもたれ、温泉のような風呂が常時使える。しかし、福祉施設には地元住民の一部から反対の声もあるので、福祉施設は近くの廃校を改良して使う案もあるという。
エコビレッジでつくる電気と温水は、隣接する家に分配が可能。近隣の家にも、この発想で普及すれば、エコビレッジがスマートシティの第一歩となる可能性が出てくる。
発電施設の南側はブルーベリーか紫にんにくの農園となる。太陽光パネルの下では、余り日光を必要としないハーブ、キノコ類を栽培し、近くに所有する畑の産物ともどもアグリソーラーを実現する。実施する農業は畑から食卓までの全過程を自社でまかなう６次産業を旨とする。
同社は、このプロジェクトにかかわるすべての工程をオープンイノベーションで行うことを考えている。太陽熱温水システムに詳しい人、福祉事業者、福祉施設で働いてみたい人、スマートビレッジに興味のある近所の人などは募集中とのこと。
現場に来れば必ずできることはある
オープンイノベーションで、太陽光・農業・福祉を混ぜ合わせたエコビレッジをつくるために、どのような図を描いているのか。同社の吉田愛一郎社長に聞いた。
吉田社長は、オープンイノベーションを導入した狙いについて、「革新的なアイデアは一つの会社にいる社員だけで話し合っても生まれてこないから」と話す。世界中から、コンセプトに共感してきた者たちで議論することによって、イノベーションに期待している。
同社は、すでに土地を購入しているため、プラットホームとして解放する形だ。ソーラーパネルは建設すれば、メンテナンス以外では人手は不要だ。課題は、福祉と農だ。このポジションに、経験者を求めている。
加えて、農作物の加工・販売・ブランディングの担当者も重要だ。このポジションに着く人は、必ずしも、現地に滞在する必要はない。そのため、都内で本業をしながら、副業またはプロボノとしてかかわることも歓迎だ。
同企画を始めて２－３年は、吉田社長が全体コーディネートを務める。収益化できてきたタイミングで、吉田社長のポジションを適任者に譲るという。コンセプトに共感し、やる気があれば、外国人に任せても問題ないと言う。
大学生たちの参加も期待している。まだ社会人経験やスキルがなくても、「現場に来れば必ずできることはある」と吉田社長。「ここに来て、自分の頭でできること、やりたいことを見つけてほしい」と話す。
同社として、オープンイノベーションに取り組むのは、今回が初だ。成功するかどうかは分からない。企画が動き出したときには、ボランタリーな集まりなので、組織が継続するか不安はある。
吉田社長は、「まずは手や足を動かすことを意識してほしい」と話す。会議ばかりしていても、何も生まれてこない。一人でもいいから、現場に行くような人と一緒にできればうれしいと期待する。
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