国際環境NGO「350.ORG」の日本支部350 Japanはこのほど、「ダイベストメント」を促進する「レッツ、ダイベスト~未来のために銀行を選ぶ1カ月」キャンペーンを始めました。ダイベストメントとは、インベストメント(投資)の反対の意味で、主に地球温暖化の原因になっている石炭・石油・ガスなどの化石燃料関連企業への投資撤退を呼び掛ける運動のこと。個人ができることの一つに銀行口座を環境に配慮した銀行へ変えることがあります。持続可能性を考え銀行口座を変えた人へ話を聞きました。

地球環境に配慮した銀行に口座を変えることは、個人ができる重要な取り組みの一つ

■「どこを見られても胸を張れる団体でありたい」

一般社団法人Earth Companyは、2014年に濱川 明日香さんと夫である濱川知宏さんの二人によって発足されました。団体を立ち上げる以前、国際協力・開発関連の仕事をしていた二人は、たくさんの高いポテンシャルや変革力をもつチェンジメーカーたちと出会ってきました。

話しを聞いた濱川さん

しかし、彼らに経歴・学歴がないことや、助成金を申請するノウハウが不足しているなどの理由で、なかなか支援が集まっていないことを知り、彼らを支援したいとの想いからEarth Companyを立ち上げました。現在は、社会変革をもたらす社会起業家を「IMPACT HERO」として、年に一人選抜し支援する事業を行なっています。代表の濱川 明日香さんにお話を伺いました。

――ダイベストは何をきっかけに知りましたか。

濱川:きっかけは、2011年にアメリカの学生たちがダイベストメント・ムーブメントを起こしたニュースを見て、とても感銘を受けたことです。自分がどんなに良い活動をしようが、自分が預けているお金の使い道に対して興味を持たなければ、それはエコでないということに初めて気づかされました。

350 Japanの活動をフォローし始めて、「My Bank My Futureキャンペーン」「地球にやさしい銀行」選びについて知りました。ウェブサイトに掲載されている情報や報告書を読み、私個人やEarth Companyがお金を預ける銀行がどのようなところに投資・融資をしているのか調べました。

――今回はどの口座をどの銀行に変えたのですか。

濱川:団体の寄付金口座を、みずほ銀行からジャパンネット銀行に変えました。

――どんな理由で変えられたのですか。

濱川:団体では、目的別にいろいろな銀行を使っていますが、寄付金窓口としてみずほ銀行を使っていました。でも、350 Japanの調査報告書を読んで、みずほ銀行の化石燃料や原発への支援金がトップであることがわかり、これはまずいなと感じました。

当時私たちは、Impact Heroとして、海面上昇の影響により世界で二番目ぐらいに早く沈むと言われる、マーシャル諸島出身の気候変動活動家キャシー・ジェトニル・キジナーを支援し始めたところでした。気候変動活動家を支援していると言いつつ、彼女への支援金の預け先が気候変動を悪化させる事業に使われていたら、それは本末転倒。

「有言実行」だとは言えないなと思ったんですね。私たちは「どこを見られても胸を張れる団体でありたい」という理念を持っています。その矛盾を解決したいと思って、ダイベストメントに踏み切りました。

――変えてみてどうでしたか。

濱川:自分の中でモヤモヤしていたものがスッキリしました。

――銀行を変えるのは大変でしたか。

濱川:私個人の意向だけで進められる訳ではないので、まず事務局のメンバーで話し合った結果、賛同を得ることができたので、タイミングをみて踏み切ったのが8月で、9月に解約しました。

解約自体は思ったほど大変ではなかったようです。実際に移行した期間は、思ったより短かったと思います。大変だったのは、支援者の方々へのご連絡や、HPなど全ての媒体での口座情報変更。特に大変だったのは、すでに印刷されているパンフレットに新しい振込口座の修正シールを貼るなどの修正作業でした(笑)

――ダイベストした理由などを寄付者の方へ発表されますか。

濱川:現在、寄付者の方へご報告する準備を進めており、団体のブログやニュースレターでもご報告する予定です。私たちとしては、有言実行の団体でありたいということを寄付者の方へ伝えたいと思っています。

そして、海抜の低い島々だけが犠牲になっていく社会ではなく、今あるすべての存在が共存していけるような世界をつくりたいという想いに、寄付者の方々は共感してくださっていると考えています。

寄付者をはじめとしたサポーターの方々は、銀行のブランドよりも、Earth Companyの信念、あり方、ビジョンなどに共感してくださっていると私は信じていて、実際にそのようなお言葉もいただいています。ダイベストメントした理由をお伝えしたら、Earth Companyをより一層信頼してくださる方のほうが多いと、私は信じています。

――銀行へ伝えたいメッセージはありますか。

濱川:今まで銀行が担ってきた役割は、戦後の国の経済や社会の発展を支えるものでした。しかし社会が経済的発展を遂げるかたわら、さまざまな弊害や社会課題も生まれました。今は時代が変わり、銀行に求められる役割も変化しています。銀行が持つ影響力は、とても甚大なものです。だからこそこれからは、課題を解決するお金の流れをつくり、社会をリードしていっていただきたい、と期待しています。そうなったら世界は、大きく良い方向に変わると信じています。

――読者へのメッセージを一言お願いします。

濱川:まずは、自分がお金を預けている銀行が、どのような投融資を行っているかということに関心を持つことがファーストステップだと思います。その上で、どの銀行を選ぶのか、意識的な決断をすることが大事だと考えます。

――今後のEarth Companyのビジョンについて教えてください。

濱川:現在、2018年のImpact Heroの選考プロセスを進めています。これからも、途上国で新しい未来をつくる変革を支援し、形にする活動を通して、従来の「社会のあり方」を問い続け、新しい時代に求められる社会を実現していきたいと思っています。それが私たちEarth Companyのミッションです。


濱川 明日香:
一般社団法人Earth Company共同創設者・代表理事 ボストン大学在学中から南国の島々を旅し、島諸国における気候変動の影響を目の当たりにする。卒業後、外資経営コンサルティング会社(現プライスウォーターハウスクーパース)に入社するが、数年後ハワイ大学大学院に留学し、太平洋島諸国における気候変動の影響について研究。2009年、サモア沖大地震時の救援活動、2011年東日本大震災の復興支援活動を経て、気候変動と災害支援を専門とする。以後、国際NGOツバル オーバービューの副代表を務める傍ら、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)の気候変動に関する集団知能プログラムClimate CoLabの運営に関わる。2014年一般社団法人Earth Company共同創設。同年ダライ・ラマ師より「Unsung Heroes of Compassion」受賞。一般社団法人Earth Company

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