「自閉症の僕が生きていく風景」は2010年3月から始まった連載コラムだ。生まれながら自由に言葉を発することができなかった東田さんが、これまでの暮らしで感じたことを中心に、「生きるとは何か」という問いに答えている。
美紀さんは、「直樹が話せないのは言葉がわからないからではありません」と説明する。「話そうとした瞬間に、頭の中が真っ白になってしまう。それが原因で人と話せないのです」
現在、東田さんは文字盤を使いながら話している。文字盤とは、パソコンのローマ字入力と同じ配列のアルファベットを厚紙に書いたものである。発したい言葉を、ローマ字つづりで指しながら話す。話しているうちに忘れてしまう言葉を、文字盤で指すことで思い出すのだ。