全国からニートを集めて、会社を起こすプロジェクトが4月1日にリリースした。告知開始から3週間ほどで、約50人のプレエントリーがあったという。今後は、6月に説明会を行い9月に起業する予定で、現在本エントリーを募集中だ。前代未聞の同プロジェクトについて、独創的な社風を持つウェブ製作会社・面白法人カヤック(神奈川・鎌倉)の柳澤大輔代表は、「何やっているのか分からないけど面白そうという感覚が価値に変わっていく」と見る。

プロジェクトが開始して約1カ月後の5月7日、同プロジェクトのプロデューサーである若新雄純氏と、33万部を超えた『千円札は拾うな』(サンマーク文庫)の著者で、中小企業共和国理事長である安田佳生氏、カヤックの柳澤代表との鼎談が実施された。(オルタナS副編集長=池田真隆)

写真左から、安田氏、カヤック柳澤代表、若新氏

最初から報酬額が決まっているとやる気が出ない?

若新氏は、応募があったニートたちに会いに行き、なぜ働かないのかを尋ねた。すると、「最初に、仕事に見合った報酬額が決まっているとやる気が起きない」との声を聞いたという。「ビジネスの前提や目的を稼ぐこと、売れることとしたくない。貨幣は、稼いで、貯めるものではなく、活動を支えるものとしてあればいいのではないか。活動に夢中になっていくうちに、気付いたら利益を上げている状態にしていきたい」。

この考え方に安田氏も、「遊びと仕事の境目をなくしていきたい。ある意味実験的ではあるが、社会的な遊びをここで行っていきたい」と話す。柳澤代表は、「20代前半の若者たちの求めているものは変化してきている。安定や収入よりも、経験や成長、面白さを求めている傾向。フタを開けてみるまで、結果は分からないことへの怖さはあるが、一部の人には受けるのでは」と答えた。

カヤックでは社員のモチベーションを上げるためには、採用段階から力を入れている。「従業員200人弱の7割は、天職と捉えることができる人物を採用している。なので、休みの日も仕事をしている人は多い。休日返上で働いているが、彼らにとっては、遊びの感覚なので、苦にならないという」と柳澤代表。

「けしからん」はけしからん

見ず知らずのニートたちを集めて、全員を取締役に就任し、会社を起こすので、マネジメントが重要になってくる。プロデューサーである若新氏は、「組織であるが、窮屈さをなくし、個性を殺さない仕組みをつくる」と話す。

カヤックは、「面白法人」というキャッチコピーや、基本給に上乗せする、サイコロの出目(%)を給料とかけた「サイコロ給」などに象徴されるユニークな制度を複数持つ。「個性を生かす組織をつくるためには『けしからん』ことをなくしてきた」と柳澤代表は話す。

「世の中に、けしからんことは一つもない。ニートはけしからんという概念を壊す組織になってほしい。経済力がなくて、集団になれば影響力を持ち、それが経済力に変わっていくこともある」。

安田氏は、「先がどうなるか分からない時代に、学校を卒業し、就職することに疑問を抱かない人が多い。働くことを否定しているのではないが、就職する前に、一度立ち止まってなぜこのタイミングで、就職するのかを考えてみることが大切なのでは」と話す。

ニート株式会社が目指すもの

若新氏は、「集まってきた人は全員、取締役なので、雇用される形にはならない。ニートたちには、それぞれの市場価値に見合う給料を前提に働くのではなく、思わず夢中になってしまうことを無理なく、追求してもらいたい。気付いたらお金がついてきたという組織にしていきたい」と、今後の展望を述べる。

「お金を気にせずに働く集団はどこへ向うのか。がっつりとビジネスをしなくても、おすそ分けしながら暮らしていけるのか見ていきたい」と柳澤代表は話した。

同プロジェクトの説明会は、6月11日都内で開催予定。参加資格は、34歳以下で、どこの会社や組織にも雇用されてなく、学校や職業訓練所にも通っていない人だ。申し込みは公式サイトから。(オルタナS副編集長=池田真隆)


NEET株式会社(仮称)のプロジェクトについて