同雑誌の巻頭には、川口さんが生きる上で大切にしている視点が紹介されている。それは、川口さんが大学時代に東京でアルバイトをしていたパスタ屋の店長の言葉である。
「周りはみんなパチンコとか、競馬とか、ギャンブルをしている。でも、俺はちっともやりたいとは思わない。俺にとってはこの店自体が、人生を賭けたギャンブルであり、遊びなんだ」
特別有名人でもないが、「働く」ことを「労働」とは異なった感覚で捉えている店長の言葉に衝撃を受けたという。さらに、『暮らしの手帖』の創刊者である故 花森安治氏の言葉にも触れ、一歩踏み出す姿勢の大切さを訴える。
花森氏は、大学を卒業する若者に、「世界はあなたのためにはない」と説く。この世界の扉は待っているだけでは開かない。自分の手で、爪に血をしたたらせて、こじあける必要があると。
川口さんは、同世代の若者たちへエールを送る。「私たちのつくる雑誌には、著名人は掲載していない。でも、私がパスタ屋の店長から刺激を受けたように、普通の人たちの感覚からきっかけをもらうこともある。少しでもやりたいことがあったら、とにかくやってみればいい」。
現在は次号の製作にとりかかっている。若者の「働く」にテーマを設定し、特殊なキャリアを持った日本の20代、10人弱にインタビューを行っている。同雑誌は、定価700円で池袋ジュンク堂、蔦谷書店などで取り扱い中だ。8月25日まで、渋谷ヒカリエ8Fで、展示会「働く“合間”に雑誌をつくる展」を開催している。
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