雑誌をつくった背景には、発起人の川口さんが抱えていた漠然とした不安がある。川口さんは社会人1年目の冬に、その不安を感じたという。就職活動も無事に終えて、希望する会社にも就職できた。実際に働いてみても、恵まれた環境で、不自由はしなかった。しかし、「このままでいいのだろうか」という漠然とした不安感があったという。

川口さんは、「働きやすい環境で、不満はなかった。居心地が良かったことで、逆に不安になり、このままではいけないと感じた」と話す。この不安感から生まれたのが、同雑誌だ。

仕事終わりや休日返上で作業にあたるので、体力的に厳しいこともあるが、0からモノをつくる体験をすることで、「良い刺激になる」と言う。「大きな組織で働いていると、既存の製造・生産ラインがあり、その調整役が仕事となる。雑誌をつくるような0から1を生み出す経験がしたかった」。

この思いに共感し、鈴木祥成さん(25)と近藤亮一さん(25)の仲間2人も集まり、雑誌をつくるためにシェアハウスを開始した。「働く」をテーマに取材したのも、川口さんたち全員が、働き方に悩みを持っていたからだ。「同世代で、この先の人生へ漠然とした不安を抱いている人は少なくないはず。そのような人を変えるきっかけを与えたい」(川口さん)

雑誌をつくる過程で、漠然とした不安感もなくなりだした。「雑誌をつくることで、まったく知らなかった世界に触れることができて、多くの人とつながれた。苦労もたくさんあったが、やりがいを感じている」と川口さん。

世界はあなたのためにはない

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