東日本大震災の復興支援活動を通じて「一人ひとりの意識をあらゆる角度から底上げする」をミッションに被災地でのまちづくりを牽引してきたNPO法人底上げ(代表理事・矢部寛明/宮城・気仙沼)。(今一生)
その活動の中から、高校生を中心として新たに生まれた活動団体が「底上げYouth」だ。県立気仙沼西高校の阿部愛里さんと県立気仙沼高校の三浦亜美さんという2人の高校3年生が、共同で代表を務めている。
彼女たちは、底上げがやっていた仮設住まいの児童・生徒を対象に勉強を教える活動で支援されていた。しかし、2012年9月に「高校生の視点で気仙沼を盛り上げる!」を合言葉に底上げYouthを結成。市内の面白い場所を探しに行ったり、中高生がまちづくりについて話し合うなどの活動を月2回のペースで進めてきた。
現在のメンバーは26名。そのうち20名は女子高生たちだ。これまで「恋人」「お祭り」「フード」という3つのプロジェクトでチームを組み、観光促進に挑戦してきた。
「恋人」チームでは、気仙沼出身で「恋人」という言葉を近代短歌史上初めて使った落合直文の影響で市内に「恋人」にまつわるスポットが多く点在していることに気づき、その場所に高校生の目線で考える新たなラブストーリーやジンクスを加え、観光リーフレットを作成。制作費はクラウドファンディングで調達し、市内外へ設置・配布した。
このリーフレットはシリーズ化し、現在では総発行部数は8600部。しかも、このリーフレットによる観光ツアープロジェクトは、地域の課題解決に取り組む高校生を表彰する「全国高校生MY PROJECT AWARD 2013」(NPOカタリバ主催)で優勝した。
一方、「お祭り」チームでは、観光客を呼び込むために気仙沼の伝統的な「みなとまつり」の情報をうちわにプリントして配ろうと、今年8月の祭りに向けて準備中だ。
祭りでは、はまらいや(「一緒にやろう」という方言)という踊りがあり、沿道の人たちを巻き込んで老若男女が3時間もぶっ通しで踊る。市内だけで30団体もある太鼓団体が1000個の太鼓を並べて一気に演奏する。体に響く太鼓の音は全国でも珍しい。
また、「フード」チームでは、郷土料理「あざら」をアレンジしてピザやグラタンにして地元市民や観光客に触れるチャンスを増やそうとレシピを試行錯誤中だ。あざらは、白菜の古漬けを酒かすと魚を入れて煮込むため、匂いがきつくて味も独特で好き嫌いが分かれる。アレンジしたものから本物への関心を喚起するのが狙いだ。
代表の阿部さんは、今春からギャップイヤーをとって働きながら大学を目指す。
「まだやり足りない気持ちが3年生にはあります。大学生になったメンバーでYouthによる観光促進を盛り上げられるよう、大学生のうちに起業してプロジェクトを事業化したい」(阿部さん)
●底上げYouth
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