東日本大震災から1年経った3月、10歳から19歳の子どもの被災体験記集が発売された。「子どもたちの3・11 東日本大震災を忘れない」(Create Media編 学事出版)。従来の文集のように親や学校の教師など大人に書かされるものでなく、自ら書きたくて応募してきた44通を集めたため、1年の期間がかかった。
編集したクリエイトメディアの今一生さんは言う。
「被災した小学生でも10歳以上になると、両親が困っているのに、自分は何もできないと責めてしまう。自分が経験したことを書き、価値があるなら印税が入る。最低1万円は保証する支援のつもりでネット上で公募したのです」
避難場所がわからず、「頑丈に作られているらしい」という噂だけを頼りに、女子トイレの中で寒さをしのいでいた宮城の大学生。電車から降ろされ、歩いて家に帰ることしか思い浮かばず、明かりもない夜の闇の中地割れにはまり込んで運よく助けられた茨城の中学生。
「原稿を集めているうちに『子ども視点』で防災教育を見直す必要があると感じた。防災をする際に、社会経験のあまりない子どもの視点で考えてあげないと。大人にとって避難所は当たり前だけど、子どもにはわからない。大人が胸まで浸かる津波の高さでは、子どもは死んでしまう」(今さん)
被災当初は治安が悪く、父親から「護身用に」とナイフを渡された岩手の高校生。ロープや薪を切り、土を掘り缶詰を開けた。すぐに刃こぼれし、さびついてしまった。
「私は将来、工学部に進学し、津波にも強いナイフに適した金属材料を研究開発したいと考えるようになりました。津波に家はのまれたけれど、夢が見つかりました」
復興支援も大事だが、被災したことから何を学ぶか。全国のこれから災害に備えたい大人たちに向けた、子どもを守る防災教育を考えるための一冊だ。(遠藤一)
被災体験記『子どもたちの3.11』 特設サイト https://www.facebook.com/kodomo311