国際基督教大学(東京都三鷹市)の社会科学研究所は、6月23日に公開フォーラム「ローカルから考える ポスト3・11の新エネルギーの展望」を開催した。同大学の学生や卒業生を中心とするネットワーク「武蔵野エネルギーシフト」が企画。転換期を迎えている日本のエネルギー政策をテーマに、前首相の菅直人氏や若い市民活動家たちが意見を交わした。

フォーラム後の記者会見での菅直人氏


地元・武蔵野市在住の衆議院議員である菅氏の他に、電力システム改革の専門家である富士通総研の高橋洋氏も招かれた。武蔵野エネルギーシフトを含めた3者で、原発推進派も反対派も共有すべき課題として、「電力の安定供給」と「原発のリスク」を論じた。

高橋氏は「エネルギーシフトとは、単に原発を自然エネルギーにすることではない。消費者が考えて電力を選択できる実質的な自由化が必要」と訴えた。

菅氏は、民主党内の有志で検討中の「脱原発ロードマップ」を紹介。2025年までの出来るだけ早い時期に脱原発を達成し、2030年には再生可能エネルギーで総発電量の半分を賄う案を示した。

今すぐの廃炉を明示していない点については、「早期の廃炉ほど収支は良いが、確実に電力会社の経営問題を招く。そこに税金を投じることになれば、国民の負担につながる」と説明した。

一方で、東電原発事故直後の日々を振り返り、「最も安全なのは原発に依存しないことと確信した」と脱原発路線を強調。「エネルギー問題は、人間の生き方の問題だ」と語り、「放射性廃棄物の処理や核燃料リサイクルに将来展望は無い」と断じた。

武蔵野エネルギーシフトは、「不満や諦めを口にするばかりではなく、地域から政治を変えていきたい」と願う大学生らが立ち上げた市民運動である。立ち見も出た会場には、学生の参加が目立った。

菅氏は「日本の脱原発は、3・11を機に本格的な議論が始まったばかり。新たなエネルギー基本計画に載るかどうかは、国民の選択にかかっている。この問題の一番の当事者は、若い人と、これから生まれてくる人だ。若い人が自分で動くことこそが日本を変える」と語った。(オルタナ編集委員=瀬戸内千代)