グリーンエコノミーをメインテーマに開催された世界最大の国際会議リオ+20が6月22日に閉幕した。それに合わせて、オルタナはA SEED JAPAN(アシードジャパン)と共催して今月4日、リオ+20緊急報告会を開催した。
報告会で登壇したのはリオ+20に参加した5人。一般社団法人CSOネットワーク共同事業責任者黒田かをり氏、国際青年環境NGOアシードジャパン理事鈴木亮氏、JACSES(ジャクセス)理事田辺有輝氏、損害保険ジャパンCSR統括部長関正雄氏、フルッタフルッタ代表取締役長澤誠氏。
5人のパネリストは、リオ+20に行って感じたことや、グリーンエコノミーの実現に向けてそれぞれの立場でやるべきこととは何か話し合った。
グリーンエコノミーとは、自然資源に配慮した経済活動のことである。石油資源を盲目的に使っていたブラウンエコノミーからの転換を訴えている。
■グリーンエコノミーのために企業が果たすべき役割
フルッタフルッタの長澤氏は、「企業の意識変革が必要。消費者にはわざわざ環境意識の高い商品だと詠うことは押し付けがましい。消費者には、環境に配慮した商品だと気づかれなくてもよいので、企業から変わって結果的に消費者にも伝わっていけばいい。なによりも、企業からの変革が必要」と強く企業側の意識改革を促した。
損保ジャパンの関氏は、日本でのリオ+20の認知度の低さに危機を感じているという。「日本のビジネスマンにリオ+20で感じたものを伝えていくことが今後の役割のひとつ。やはり、企業が中心となって社会課題を解決していくべき」と話す。
■寒い会議室と熱いサイドイベント——NGOから見たリオ+20
ジャクセスの田辺氏はリオ+20の印象を、「寒い会議室と熱いサイドイベント」とまとめた。政治家や要人たちが集まる会議室は冷房が効いていて涼しいが、市民団体やNGOらが集まるサイドイベントは、30度の炎天下の中開催されたという。
さらに、田辺氏は今回のリオ+20を厳しく批判する。「結局、グリーンエコノミーの捉え方が先進国と新興国、途上国で最後までまとまらなかった。定義も決まらなかったので、政策も決まっていない」と寒い会議室に不満を訴える。
アシードジャパンの鈴木氏もグリーンエコノミーが定まらなかったことを指摘した。グリーンエコノミーが定まらなかった原因として、先進国と新興国、途上国の3者に共通する「共通言語」がなかったことが影響しているのではないかという。
■原発語られなかったリオ+20 福島の有機農家が声あげる
「リオ+20でもジャパンパビリオンでも、原発のげの字も語られなかった。伝えることは日本の責任だと思う」と話すのは、福島県有機農業ネットワーク理事長の菅野正寿氏。
菅野氏はブラジルに行き、本会議とは別で開催されていたサイドイベントの一つ人民サミットにおいて、福島の現状を伝えた。「原発被害の規模は戦争に次ぐ。これだけの事故を起こした日本がなぜ、その危険さや愚かさを伝えないのか、疑問に思う」と政府に対する不信さを表した。
菅野氏は、第一次産業を守ることが新しい社会をつくると訴える。「双葉町に原発がきたのも、産業が弱かったことが大きい。企業誘致や原発誘致をすることでしか利益を得ることができない構造を変えるには、第一次産業の再生がキーである」と話す。
■リオ+20今後の展望
CSOネットワーク共同事業責任者の黒田氏は、統合の道が見えたのではないかと話す。「それぞれのセクターはつながっているのだと認識した。これからは、それを踏まえて活動をしていくことに期待している」と今後の展望に期待を込めた。
フルッタフルッタの長澤氏は「セクターが繋がることで課題となるのは、誰が仕切るのかということ。インクルージョンという言葉を会議ではよく耳にしたが、あらゆるセクターと繋がる仕組みづくりをどうするのかが問題である」と今後の課題を話した。
■活動異なるセクターをつなげるには
今回の報告会では、異なるセクター同士での連携が大切だとまとめられた。しかし、フィールドの異なるセクターがまとまるのは容易ではない。菅野氏は、想像力が大切ではないかと提案する。
「今、福島からは人がどんどん減っている。住民を追い出す形になってしまう復興ではなく、住民を巻き込んだ復興にならなくてはいけない。その為には、農家や企業、地域が、それぞれの立場を思いやる想像力を生かしたネットワークを結んで共に立ち上がることが必要」と、話した。
際立つ成果もなく終了した会議に足りなかったのは、熱い想いでも、冷静なロジックでもなく、人を思いやる想像力ではなかっただろうか。(オルタナS副編集長=池田真隆)