囲碁のルールを使った「石取りゲーム」が、子どもから大人まで楽しめるコミュニケーションプログラムとして利用されている。ふれあい囲碁と名付けられたそのプログラムの特徴は、老若男女誰でも同時に参加できることである。

子どもたちにふれあい囲碁を教える安田泰敏さん(写真右)


ふれあい囲碁のルールは一つしかない。それは、相手の石を囲むと取れるというものだ。複雑なルールがなく、単純な「石取りゲーム」だからこそ、誰でも容易に参加できるのだ。

小中学校や障がい者福祉施設、さらには国際交流の場などで「ふれあい事業」として取り入れられている。千葉県柏市では「地域づくり」として、山形県遊佐町では「バリアフリー」として利用されている。





囲碁をきっかけにコミュニケーションを取れるようになるので、福祉施設で働くスタッフからは、「福祉の基本であるコミュニケーションの取り方を手助けしてくれる」と好評価を受けている。

小学校で開催されたとき、参加した児童からは、「それまで交流のなかった同級生と遊べるようになった。1年生と6年生同士や教師と児童同士でゲームを行うことで、上下関係なく人間関係を築くことができる」という感想がでた。

この活動は平成5年、囲碁のプロ棋士安田泰敏さんにより開始された。いじめによる児童の自殺報道が気になった安田さんは、自殺を食い止めるには、人とのつながりが必要なのではないかと思い、ふれあい囲碁を企画したという。

全国各地の施設を周り、平成10年にはオランダやベルギーなどヨーロッパ6カ国を巡った。平成13年に静岡県富士市で開催された「ふれあい囲碁ゲーム全国大会」では、天皇、皇后両陛下も参加した。

海外でも、ふれあい囲碁はコミュニケーションを深める


次第に全国各地で自主的に同活動を行う団体が誕生してきたので、2007年には、「ふれあい囲碁ネットワーク」を構成した。全国各地で活動する団体間の連合体として機能し、現在は全国10団体以上が加盟している。

小学校や福祉施設など、年間50回ほどイベントを開催しているふれあい囲碁ネットワーク神奈川の原安喜子理事は、「いじめられている子や、ひきこもりの子らが人とふれあうきっかけとなるふれあい囲碁を多くの場に広げていきたい」と話す。(オルタナS副編集長=池田真隆)


ふれあい囲碁ネットワーク