オーガニック食品のストアで、アラビア文字の刻印がある石鹸があった。シリア産のカサブ石鹸だ。シリアは文明発祥の地の一つで、日本と同じアジア圏に属する国でもある。ヨーロッパとアジアの十字路に位置して、重要な役割を担ってきた。

手作業で作られる石鹸

最近のニュースで、シリアという国を初めて知った人もいるだろう。カサブ石鹸を販売しているのは、シリア人でクロスロードトレーディング代表取締役のガザールさんだ。ガザールさんも、「日本は、戦争で大きな被害を受けたにも関わらず、再建し豊かになったユニークな国」、というイメージしかなかったそうだ。

ガザールさんが初めて来日した20年前は、多くのイラン人労働者がビザなしで来日していた。当初は、社会的背景の影響があり見た目で差別され、バブル期の資本主義社会にも幻滅し5年で帰国してしまった。その後、独裁国家のシリアで、NGOや日本人向けの観光の仕事をしながら、日本との関係性を見直してきた。

シリアを含むアラブ地域は、古くからオリーブや月桂樹の原産国で、それを原料にして石鹸を作っていた。100年以上も変わらずに、使い続けられている伝統的な日用品は、その国の文化だ。一般市民のレベルで、シリアの文化を日本で学んだ現代的なビジネスという形で伝えたいと考えた。

ローレル(月桂樹)の木

毎日使う商品は、身体にも自然環境にも良いものでなくてはならない。商品は、全て原料と原産地にこだわり、無農薬か化学肥料や農薬を最低限に抑えた添加物なしの商品だ。営利追求にとらわれず、何百年も続く会社にしたいと思っている。仕事で一番感動したことは、「シリアの商品を喜んで使って下さるお客様から寄せられた声」だそうだ。

「環境のせいにせず夢を諦めずに持ち続け努力すれば、必ずその夢は叶うと思います。それができる環境にあることを感謝しなければならない」というメッセージを若者へ伝えたい。若者が夢を叶えるため、対立せずに共存していきたい、という願いが込められている。(オルタナS特派員=奥田景子)


クロスロードトレーディング:http://www.crosroad.com