白川郷は岐阜県大野郡白川村と高山市清美町の一部地域にある世界遺産。合掌造りで有名なこの地には、年間200万人以上が訪れています。

白川郷の合掌造り家屋は、江戸時代中期から昭和初期の間につくられました。屋根の角度をきつくすることで降り積もる雪によって屋根が潰れないように、また日当たりを良くし、雪解けが良くなるようにと屋根は東西を向いています。

今日でこそ世界遺産として大切に保護されている白川郷の家屋ですが、元々はそこまで文化的な価値を認められていませんでした。戦後の庄川流域のダム開発で多くの家屋が取り壊され、水没するなどして減少していき、1924年時点で300棟ほどあった家屋は1961年には190棟まで激減してしまいました。

こうした状況の中で、1971年に地元の青年達が中心となって「白川郷荻町集落の自然環境を守る会」が発足しました。会を発足後国への働きかけが功を奏し、5年後には「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されました。そして、観光客の呼び込みなど対外的なPR活動なども行い、ついに1996年世界文化遺産に指定されました。

しかしこうした華々しさの一方で保存活動には大変な労力と資金が必要になります。「世界遺産白川郷合掌造り保存財団」が保全活動を行なっていますが、基金の運用だけでは資金が足りず、県からの助成と村からの財政支出でなんとかやりくりをしている状況です。

さらに、観光客が増えることは必ずしも良い事だけではないようです。観光客を相手とした商売が盛り上がると、手入れなどが行われず放置されてしまう畑も少なくありません。

また、一部の住民が運営する個人有料駐車場による景観の悪化、通路が狭いために渋滞が起こるなども大きな問題となっています。こうした問題に対し、昨年末には地元自治会が2014年4月から観光客の車が集落内に乗り入れる時間帯を規制するよう陳情書を出すことを決めました。

地元の方々だけではなく、日本全体で文化の継承に向けて努力する新しい段階に来たのかも知れません。(オルタナS編集部=大下ショヘル)

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