国際労働機関(ILO)駐日事務所と法政大学大原社会問題研究所は10月23日、第25回国際労働問題シンポジウムを都内の国連大学で開催した。その中でILOアジア太平洋総局の若年雇用専門家、マシュー・コニヤック氏は、2012年のILO総会で決議された「若年雇用の危機:行動の要請」について基調講演した。

国際労働問題シンポジウムの様子


2012年の若年(15~24歳)失業者数は全世界で約7500万人。失業率に換算すると12.7%だ。世界の失業者数約2億人の4割が若年の男女で、この半分弱に当たる3640万人が、世界の労働力の3分の2を占めるアジア太平洋地域に集中している。

仕事に就くのが困難という状態は、若者の就業意欲を削ぐだけでなく、労働市場から離脱することで経済的な機会を失うことを意味する。また、失業者は心理的なストレスを抱えがちなため、社会に対しても悪影響を与える。世界各地では、暴力や犯罪の増加といった危機的な状況が起きている。

2005年のILO総会では、若年雇用について、マクロ・ミクロ経済の介入や労働の需要と供給、雇用の量と質に対し、包括的でまた一貫性のあるアプローチを要請するということで合意した。ところが一定の進展はあったものの、十分な結果が出ていないのが実情だ。

解決すべき課題としてコニヤック氏が指摘するのは、①経済政策のうち優先すべき事項と合致した「総合的な雇用政策」の枠組みが不十分なこと②若年雇用対策に振り向ける財源が限定的で、財源の再配分が必要であること③大半の介入が供給(雇用者)サイドに重点が置かれ、需要(労働者)サイドへの取り組みが低調となっていること――の3つ。

こうした課題を踏まえて、2012年のILO総会は、下記の政策を実施できるよう、今後の財源の配分について考慮することを決議した。

1)雇用の優先度を重視するマクロ経済政策を支援する。産業政策と部門別政策に取り組む。民間部門の成長を促進する。労働集約的な公共投資計画を展開する。

2)雇用されうる就業能力(エンプロイヤビリティー)の育成、教育、訓練、スキルを提供する。就学から就業への移行を目指す。

3)最も不利な境遇にある若年に対して、経済的・社会的恩恵をもたらす労働市場政策に焦点を当てる。公共投資と雇用プログラムを促進する。

4)事業の立ち上げと、事業を順調に運営できる環境を整備する。民間部門とのパートナーシップを構築し、若年起業プログラムを設計、実施する。

5)労働法や労働協約を、すべての若年労働者に適用する。インフォーマル経済に就く若者にアウトリーチ活動を行う。

コニヤック氏は、若年雇用の危機的状況について「とにかく雇用を先に考える」取り組みの必要性を強調。雇用を増やす政策の実施を優先課題とすべきと指摘した。(開発メディアganas記者=保田道雄)


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