化粧品の動物実験廃止を求めるシンポジウム「美しさに犠牲はいらない」が10日、東京日比谷図書文化館で開催された。ゲスト対談として、女優でタレントの杉本彩さんとファッションジャーナリストの生駒芳子さんが登壇した。芸能人としてのリスクを掛けて動物実験廃止を訴える杉本彩さんが決意を話すと、会場からは拍手がわき起こった。
■ただの「芸能人」ではいたくない
動物実験廃止へ今年3月が節目となる。EUでは、一部例外とされていた試験についても完全に禁止とする期限を3月に迎える。国内最大手の資生堂も3月には、動物実験施設を閉鎖し、外部への委託も含めて化粧品開発のための動物実験を全廃すると発表した。
そもそも日本では、全ての化粧品に動物実験を行う必要はない。では、なぜ動物実験を行うのか。既存のデータにはない、新しく開発したタール色素や紫外線防止剤、防腐剤を配合するときや、規制されている成分の量を超える場合は動物実験を行わなければいけない。
マウスにされるウサギは、目がただれ、身体が麻痺し、生死に関わらず廃棄物として処理される。美しさのために犠牲があるということを、消費者の約7割は知らないという。
登壇した杉本彩さんは、「動物実験の現場を目にしてから、一人の人間として何かできないかと思った」と話す。芸能人として、動物実験反対を声高に訴えるには、かなりの覚悟が必要だ。
動物実験に関わる企業からの協賛は得られなくなり、仕事が激減することが考えられるからだ。しかし、「小さい頃から動物に助けられていた。芸能人でいることが目的ではない。芸能人という肩書きを利用して、動物愛護をアピールしていきたい。そうすることで、私自身の人生に意義を感じることができる」。
■消費者はわかっている
『VOGUE』『ELLE』での副編集長を経て、2004年にマリ・クレール日本版の編集長に就任した経歴を持つファッション・ジャーナリストの生駒芳子さんは、「消費者は、してはいけないことが何かわかっている。企業側が変わることをおびえているだけ」と話す。
この意見に対し、杉本彩さんも賛同する。「動物実験反対を宣言する企業には、このまま臆することなく突き進んで欲しい。消費者は必ず、正しいことをする企業に理解を示すはず。私自身はひるまずストレートに言いたいことを発信する」と。
この発言に対して、生駒さんも「勇気ある彩さんの決断を応援したい」と言い、会場からも拍手がわき起こった。
■成熟した美しさを
生駒さんは、「今の日本社会の美しさは、若さとつながっている。成熟した美しさも必要なのでは」と話す。パリやロンドンでは、60代になっても素敵な老夫婦カップルがおしゃれして、ディナーを食べている姿が一般的だという。
「企業のマーケティングも25〜35歳が購買意欲の高い主力と位置づけているが、それは時代遅れの考え方。その世代の女性は物を買わない。むしろ、40代〜50代の女性の方が意欲は高い。それなのに、彼女たちに見合う商品が少ない」
「若い時には、美しさを手にいれているが、それは一時的なもの。ある一定の年齢を過ぎると、人間の内面が外見に出る。そのときのためにも、目には見えないが、内面的な美意識を高めていてほしい」と、杉本彩さんは答えた。
同シンポジウムには、化粧品関係者など女性を中心に約200人が集まった。企画したのは、動物実験廃止を目指す女性たちだ。NGOや企業などから団体の垣根を超えて結集した。
主催団体である、美しさに犠牲はいらないキャンペーン実行委員会の亀倉弘美委員長は、「消費者の意識は高まっている。これからも、動物実験反対の動きを加速させていきたい」と話した。(オルタナS副編集長=池田真隆)