NPO法人雪氷環境プロジェクト(北海道・札幌)では、積雪寒冷地で生成される雪や氷などの環境にやさしい冷熱エネルギーを利用し、地球温暖化やヒートアイランド現象の問題解決を図るための活動を進めている。
雪冷房は、北海道美唄市の介護老人保険施設「コミュニティホーム美唄」(社会福祉法人南静会)に導入されている。同市には世界初の雪冷房マンションも1999年に完成しており、2008年の洞爺湖サミットではザ・ウインザーホテル洞爺国際メディアセンターの冷房がすべて雪冷房で賄われた。
雪の冷気を送風するという冷房システムには電気冷房機のように室外機からの排熱もなく、温暖化を促進させるフロンガスの使用もないため、環境にやさしい。
従来型のエアコンによる冷房と比べて電気料金が10分の1にまで削減でき、除雪費や労力も削減できるため、雪を使いたい寒冷地と雪冷房を使う首都圏の双方の生活者にとって経済的だ。
何よりも雪は無料。それが豊富にある豪雪地帯にとっては経済活性化の切り札が生まれる期待もある。雪貯蔵で保存された鮮度の良い農作物を出荷できるようになれば、高品質・高価格の新米のまま備蓄できることになるからだ。
ただし、首都圏での雪冷房の実用化には、雪国から大量の雪を輸送するコストに問題があると、同NPOの理事長・小嶋英生氏は指摘する。
「1トンの雪で6畳1間を20日間冷やせます。これによって3200円程度の電気代が節約できますが、1トンの輸送コストが同額以上にかかってしまう。そのため、CO2排出権取引で相殺できないか検討中です。札幌市によると1500万トン以上の雪が残っているので、それらをすべて雪冷房に利用できれば32億キロワットの電気が節約できるそうです。札幌市内の年間の消費電力が95億キロワットなので、約3分の1も節約できるのです」
今後、雪冷房を導入することは、都心に本社を持つ企業の環境意識を測る新たな物差しになりそうだ。(今一生)
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