約10年前、スタジオジブリ制作、高畑勲監督の劇場アニメ作品、「平成狸合戦ぽんぽこ」が公開されました。

開発が進む東京都の多摩地域を舞台に、タヌキが人間に対して抵抗する様子を描いた作品で、テレビ放送も何度かされている作品です。見たことのある方も多いのではないでしょうか。

東京都の人口はおよそ1,320万人。そして多摩地区(主に23区外)の人口は約3分の1のおよそ420万人です。非常に多くの人が暮らす多摩地区では、住宅地としての開発が進み、マンションや団地が次々と建設されてきました。

その結果、多摩地区に広がる丘陵、多摩丘陵のほとんどは切り開かれてきました。そして、東京都最後の里山とも呼ばれる南山(稲城市)でも、開発計画が進み、住宅地や霊園、商業施設などとして今後整理されていく予定です。

南山の開発計画は、南山東部土地区画整理事業と呼ばれ、この事業を巡って多くの論争が起きました。事業へ反対する市民団体が立ち上がり、市内外から20,000筆以上の署名を集めました。

稲城市長選では賛成派と反対派による対決も起きました。「平成狸合戦ぽんぽこ」の高畑勲監督は南山を訪れ、テレビ番組で事業に対する批判を行い、稲城市外からも大きな注目を集めました。

こうして事業へ反対する声は非常に大きなものとなりましたが、反対案は最終的に議会を通らず、結果的に2009年起工式が行われることになりました。南山には崖地があり、土砂崩れなどの危険性も指摘されていたため、単に開発のためだけでなく、そうした問題への対処も事業を行う理由として含まれていたようです。

開発事業は現在進行中で、2019年に終了予定となっています。南山には多くの野生動物が生息しており、タヌキや野うさぎだけでなく、オオタカなどの希少動物も生息しています。

南山の開発は、これらの動物の住処を奪ってしまうことになるかもしれません。一方で住宅地の開発、土地の整備も人の生活のためには必要なことなのかもしれません。

東京都最後の里山とも言われるこの南山の開発問題は、今後人と自然が共生していく手段を考える上で、非常に重要な問題であると言えます。(オルタナS編集部員=堀川雄太郎)

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