老後までに何千万円貯める方法(そうでないとみじめな老後)、手取り20万円で家族をどう養うか、100円ショップの賢い活用方法、などなど。確かに、これらのノウハウはある程度必要で、私自身も参考にしなければならない所はあると思う。しかし人気コーナーにひしめき合う本から伝わるメッセージは、「現社会に自分を合わせてどう生きるか」であり、「より良い生き方に向けて社会をどう変えていくか」ではない。
NPOの仕事は、この後者のメッセージを社会に伝え、自分たちでその方法を実践したり、誰かに実践してもらえるようにするための基盤・環境をつくったりすることである。仕事をしていると、様々な要因で社会的に弱い立場にある人々と、彼らの暮らしの質を支えたいと、日々努力している人々に多く出会う。
話を聞き、個人として、仕事として一緒に何かをつくり出していく中で、自分の身体的・経済的現状が、池に張った薄い氷の上に立っているようなものであると感じる一方、万が一足元の氷が割れて池に落ちたとしても、助けようとしてくれる人は必ずいる、という大きな信頼感が私の中で育っている(実際に自分が助かるかはまた別の問題)。
「現状を上手く活用する」生き方と、色々不便はあるけれど、「人を信頼して社会を良くしていこう」と思う生き方。NPOで働くということは、後者の生き方を選択することであり、そのような思いがあるからこそ、何があっても、私はきっとこれからも生きていける、と思う。(寄稿・日本フィランソロピー協会事業部マネージャー 藤川祥子)