京都大学法学部教授も務めた故 高坂正尭氏は、「日本国憲法は素晴らしい。なぜなら、国民に主権があり、言論表現の自由があり、戦争を放棄しているからだ」と述べている。しかし、現在、自民党が進める憲法改正草案では、この3点はすべて変わる方針だ。

変更される点として、大きな注目を受けているのは、「戦争の放棄」に関する9条、「国民の権利及び義務」の12条、そして、「表現の自由」を規定した21条だ。どのように変更されるのか、下記に全文と変更点(黒太文字)を記載した。


・第九条について

■現憲法■

第九条(戦争の放棄)
第一項:日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
第二項:前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

■改正案■

第九条(安全保障
第一項:日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない。
第二項:前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。

(国防軍)
第九条の二
一:我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。
二:国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
三:国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。
四:前二項に定めるもののほか、国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める。
五:国防軍に属する軍人そのほかの公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。

第九条の三(領土などの保全)
国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。





・第十二条について

■現憲法■

第十二条(国民の権利及び義務)
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持なければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

■改正案■

この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。




・第二十一条について

■現憲法■

第二十一条(表現の自由)

一:集会、結社及び言論、出版その他の一切の表現の自由は、これを保障する。
二:検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

■改正案■

一:集会、結社及び言論、出版その他の一切の表現の自由は、保障する。
二:前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。
三:検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。

第二十一条の二
(国政上の行為に関する説明の責務)
国は、国政上の行為につき国民に説明する責務を負う。