日本の将来のエネルギー政策に関する国民からの意見募集(パブリックコメント)の締切りが、明日12日に迫っている。東電原発事故を踏まえた政府の脱原発依存の方針について、国民の意見を反映させる貴重な機会だ。

■「脱原発か経済停滞か」は不毛

原発ゼロシナリオ(政府資料から引用)

政府が示すエネルギー政策のシナリオは、2030年時点の電力構成における原発依存度をめぐり0%、15%、20~25%の3つを設定する。パブリックコメントと並行して各地で行われた意見聴取会では、国民の7割が「原発ゼロ」を支持している。

一方、経済界はこぞって原発ゼロに強く反発。「火力発電の焚き増しで燃料コストが増える」「電力価格の高騰が経済を圧迫する」などというのがその理由だ。政府の原発ゼロシナリオを見てみても、「経済的負担が重くなってでも(自然エネルギーの)導入を促進」「高効率空調機器以外の暖房機器(ストーブ等)販売禁止」など、何やらおどろおどろしい文言が並ぶ。

これではまるで「原発ゼロか、さもなくば経済停滞か」という「究極の選択」だ。しかし、原発ゼロシナリオでは省エネ効果が1割しか見込まれていない。また、自然エネルギーの導入拡大による経済効果がほとんど見積もられていないことは、枝野幸男経済産業相自身が7日の会見で認めている。

原発ゼロシナリオの前提そのものに大きな議論の余地があるのだ。「脱原発か、経済停滞か」へのわい小化は不毛である。

■資源は有限、「低エネ」は必然

今回の政府のシナリオからは、経済成長への固執は伝わっても、大量生産と大量消費の見直しや、国民の幸福度をどう増やすかなどの視点は読み取れない。10万年以上も管理しなければならない核のゴミをこれ以上増やしてよいのか、という論点も見えてこない。

そもそも化石燃料もウランも有限である。経済成長しか考えないシナリオの先にあるのは「人口と工業力のかなり突然の、制御不可能な減少」であると、1972年の時点で警告したのはローマ・クラブだ。「成長の限界」の考慮が大切だろう。

昨年7月のオルタナ・オンラインで、もったいない学会会長で東大名誉教授の石井吉徳氏へのインタビューを掲載した。その中で石井氏は、エネルギーの独占を終わらせ、浪費や無駄を排し、自然エネルギーの地産地消と直接利用を進めるなどとする「低エネルギー社会」の必要性を説いている。

パブリックコメントでは3つのシナリオを選ぶにとどまらず、自由に意見を投稿できる。政府のシナリオの欠落を国民が埋める時だ。(オルタナ編集委員=斉藤円華)