国際労働機関(ILO)は9月23日、児童労働報告書を発表した。今回の報告書では初めて、国の経済レベルと児童労働の関係性について分析が行われた。その結果、児童労働は中所得国に最も多く、最貧国だけの問題ではないことが明らかになった。(オルタナS副編集長=池田真隆)

アフガニスタンやバングラデシュなどの最貧国54カ国では、児童労働者数は7439万人で、インドやガーナなど中所得国40カ国では8131万人にのぼることが分かった。

全世界の児童労働者は約1億6800 万人となり、2008 年当時の推計と比べ、4700 万人の減少となった。ILOが初めて世界統計を発表した2000年の推計2億4600万人から、児童労働者は3分の2まで減少したことになる。

今回の報告書を受けて、児童労働問題に取り組むNGO ACE(エース)の岩附由香代表は、「大幅に児童労働者数が減少した事実は、具体的な取り組みを増加させることで児童労働の撤廃が可能であることの証。政府、企業、労働組合、市民社会が連携して取り組みを増やすことが鍵」と話した。

同団体は1997年から、児童労働が最も多い農業セクターに焦点を当て、インドのコットン産業、ガーナのカカオ産業の問題解決に取り組んできた。


児童労働解決へ動くエースの白木朋子事務局長

着実に児童労働者数は減少しているが、残された課題もある。セクター別に見たときに最も割合が高い農業セクター(58%)や5~17 歳人口の21.4%が児童労働者とされるサハラ以南アフリカへの支援が届いていないことだ。

社会的パートナーとの連携、ILO182号条約の第8条に記載されている「当事国以外の国による国際協力やパートナーシップの必要性」が重要と指摘された。

■政府、企業、市民が果たすべき責任と役割

児童労働撤廃に向けて、政府、企業、市民社会組織それぞれが果たすべき役割とは何か。岩附代表は、「児童労働問題は、日本のODAの基本方針にある人間の安全保障に関わる課題である。日本の国際教育協力の重点政策として、児童労働撤廃により積極的な姿勢を示してほしい」と今後の日本政府の取り組み強化に期待を寄せる。

企業の責任についても岩附代表は、「サプライチェーンにおける児童労働問題は大きな課題だが、特に原料までさかのぼってチェックできている日本企業は少ない」と指摘する。

近年、企業と人権というテーマが注目を集め、国際的なビジネスにおいて児童労働問題の重要性は高まっていますが、日本企業のリスク意識は高くないという。


2013 年10 月の児童労働世界会議の議題にも、サプライチェーンにおける児童労働が含まれているが、日本からはビジネスセクター代表となる使用者団体の参加は予定されていない。さらに、ILO の報告では、日本企業が進出予定の海外市場には児童労働の問題がある可能性が高いことが分かった。

「問題が起きてから対処するのではなく、児童労働を未然に予防するビジネスの展開が求められる」と、利益追求だけではなく、企業にエシカル性を求めた。

市民社会組織の役割もますます重要性が高まっている。岩附代表は、「コミュニティの中で子ども 1 人ひとりにきめ細やかなケアができるのが NGOの特長。現地の活動の多くはNGOが担っている」と指摘し、「活動資金となる寄付が集まれば、支援地を拡大し、取り組みを加速化させることが可能」とさらなる取り組みへの意欲を示している」と話した。