去る6月17日、公職選挙法が改正され、早ければ2016年の参院選より選挙権年齢を20歳から18歳に引き下げることとなりました。これはじつに70年ぶりの選挙権年齢の改定となります(1945年に25歳から20歳に引き下げ)。これにより、有権者数は約240万人増え、18歳、19歳が有権者に占める割合は約2.3%となります(注1)。国会の衆議院、参議院共に全会一致で可決したこの「18歳選挙権」。多くの期待が寄せられるこの制度改正は、日本を救う特効薬となるのでしょうか?(United Youth代表=福島 宏希)
まず、18歳選挙権の意義を、大きく二つ考えてみます。
(1)若年層の意見の政治への反映-「シルバーデモクラシー」の改善
まず大きな意義として、一般に「シルバーデモクラシー」と称される、高齢者偏重の政治が緩和されることが挙げられます。①少子高齢化、②権利の制限(選挙権・被選挙権は一定年齢以上でないと権利を行使できないこと)、の2点によって、若年層の政治的影響力は構造的に弱い状態にあります。30歳以下が有権者数に占める割合は約15%にしかなりません。加えて、低投票率(60代に比べ20代の投票率はほとんどの選挙で約半分)、有効な利益団体を持たないことなどの若年層特有の条件が加わり、若者よりも高齢者寄りの政治が行われてきました。
今回増えることとなる240万票というのは、2014年12月の衆議院選挙の比例代表における各党得票数と比べると、公明党(約730万票)のほぼ3分の1、日本共産党(約600万票)の約4割となります(注2)。若年層の意見が今よりも政治に反映されることにより、シルバーデモクラシーが改善されることが期待されます。
(2)若者の政治への関心の高まり
次に、早ければ高校3年生から選挙に参加することになることから、学校教育で今よりも政治や投票に関する教育が進むことが考えられます。現に、国会審議の段階から政治教育のより一層の推進が課題であるという意見が出され、副教材の配布・作成や模擬投票の拡充も検討されています(注1)。
現行の20歳からの選挙では、投票権を有する段階では大学生か就労者であることがほとんどであり、政治などを専門に勉強していない限り、選挙権年齢に達したからといって、学校(大学)や職場で特段政治や選挙について学んだり、意識づけられたりすることは少ないと言えます。現に私は大学では理工学部でしたが、大学教育としては政治や選挙について何も学んでいません。しかし、これが高校等であれば、大学よりも専門分化されておらず、授業科目や学校行事として政治や選挙について考える機会は格段に増やしやすくなると思われます。
より早い段階で政治に関心をもつ機会が増えることで、日本人の、特に若者の政治離れが改善されることが期待されます。
次回の連載では18歳選挙権施行後の日本が、そして若者が抱える課題を考えていきます。
福島宏希:
若者の力を強くするためのプラットフォーム「United Youth」代表。「社会から弱い者いじめをなくしたい」という想いから、子どもの頃から環境問題に関心を持つ。早稲田大学理工学部卒業、フロリダ州立大学大学院(修士)修了。環境コンサルティング会社に勤務しながら、洞爺湖G8サミットに向けたユースの分野横断プロジェクト「Japan Youth G8 Project」を主宰し、環境副大臣へ提言を提出した。NPO法人エコ・リーグに事務局長兼専従職員として勤務し、2012年「リオ+20(国連環境開発会議)」に政府代表団顧問として参加した。
*注
1,改正公選法:18歳選挙権が成立 16年参院選から(毎日新聞2015年6月17日)
http://mainichi.jp/select/news/20150617k0000e010179000c.html
2,平成26年12月14日執行 衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査 速報結果http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/data/shugiin47/