NPO法人僕らの一歩が日本を変える。は8月、高校生100人を集めて国会議員と議論を交わした。議論のテーマは、「憲法」「18歳選挙権」「地方創生」など10個。それぞれのテーマで、高校生の意見をまとめた「若者宣言」を発布した。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
同団体が行ったイベントの名称は、「高校生100人×国会議員vol.5」。イベント当日は、北海道から沖縄、さらには米国留学から帰国した高校生まで100人が集まった。高校生は、「憲法」「18歳選挙権」「一次産業」「エネルギー」「社会保障」など10のテーブルに10人ずつ分かれた。
各テーブルには、そのテーマの有識者が着いた。高校生たちは有識者から講義を受け、その後、国会議員も加わりディスカッションを行った。参加した国会議員は、全政党からで、80人を超えた。
今年のテーブルのなかで、最も注目だったのが、「18歳選挙権」について。若者の政治離れを改善するために、今後の政治教育のあり方を話し合った。
■「政治に若者の居場所を」
18歳選挙権のテーブルでファシリテーターを務めた久保直生さん(青山学院大学2年)は、「政策について具体的に話し合う姿が印象的だった」と話す。高校生も国会議員も様子を見合うだけでなく、お互いが疑問に思っていることをぶつけあって議論が盛り上がったという。
18歳選挙権のテーブルで話し合われた「若者宣言」は、「政治と若者の距離を縮める。双方が寄り添い合う政治」とした。
同団体は2012年4月、高校生6人で発足された。ミッションに「若者と政治に新しい出会いを届ける」を掲げ、高校生100人と国会議員との会議や東京の荒川区と葛飾区の中学校で、政治教育を教えている。
中学生向けの授業では、仮想都市における市長選挙を実施する。選挙を通して、その都市が抱える課題を理解し、候補者のマニフェストの必要性を判断する。はじめのうちは、自分に都合の良いことを言う候補者に好感を持つが、ディスカッションをしていくと、政策の中身で比べるようになり、考え方が変わるという。投票は、アイパッドを使って行う。
代表理事を務める後藤寛勝さん(中央大学経済学部経済学科3年)は、「若者と政治の距離を埋めるためには、若者が政治に興味を持つことに加えて、政治も若者に歩み寄っていくことが求められる」と話す。同団体では、2013年参議院選挙に合わせて、高校生を対象に街頭調査を行った。5500人の高校生にどの候補者に共感するか尋ねた結果、政策をしっかりと読んだうえで判断したのは、わずか10人だった。
ほとんどの高校生が写真や政党の名前だけで判断した。「みんなの党って、みんなで考えていそうだから良い。幸福実現党は、幸せを運んでくれそう」などという意見が出たという。
若者の投票率は3割程度で、6割強が投票する高齢世代との差は広がり続ける。シルバーデモクラシーと喧伝されるなか、後藤さんは、「政治の中に若者の居場所をつくらないといけない」と指摘する。
「18歳が選挙権を持っても、学校では、現代政治を教えていないため、本質的な解決にはならない。実社会で政治をどう使うのかを教えていきたい」(後藤さん)
後藤さんが政治に関心を持ったのは、地元の友人を応援したいという気持ちがきっかけ。後藤さんは新潟県新潟市で育ち、大学入学を機に上京してきた。新潟の高校の友人たちが、農業で一旗上げたい、IT革命を起こすような経営者になりたい、世界一のピアニストになりたいなど夢を持っていて、彼・彼女たちの背中を押したいと強く思った。政治なら、どの分野においても通じており、友人の夢を応援できると分かり、ニュースやテレビで政治について勉強するようになった。
日本では、「誰に投票したのか」を話すことがタブー視されている雰囲気がある。学校現場でも、公平の観点から、現代政治を教えることに慎重だ。後藤さんは、この空気感を変えていくため、「全国の若者に政治の使い方を教えていきたい」と力を込める。
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