医薬品を子どもが誤飲し、おう吐や意識障害を起こして医療機関を受診する事故が起きている。今年3月に発表された厚生労働省の報告「家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」によると、2013年度にあった子供の誤飲事故の品目は薬が最も多く、1979年度の調査開始以来、初めてたばこを上回るなど、深刻化している。
さらには今年9月16日には、消費者庁・厚生労働省がPTP包装の誤飲事故の発生について改めて注意喚起を製薬会社や医療関係団体等に通達しており、事態の悪化に歯止めがかからないのが現状だ。
認知症患者の増加や高齢社会の到来により、高齢者による医薬品の誤飲事故も後を絶たない。日本で処方される薬剤は、薬を保護するため1錠ずつプラスチックにアルミなどを張り付けたPTP(Press Through Package)包装シートに収められているのが一般的だが、これを誤って飲んでしまうと、PTPの鋭利な切り口がのどや食道を傷つけ、激しい痛みや嘔吐を繰り返すなど、重大な健康被害を及ぼす危険性がある。除去には内視鏡による取り出しや手術が必要なため、高齢者への身体的負担が非常に大きいのも問題だ。
こうした問題だけでなく、複数の医療機関から薬を処方されて飲みきれず、症状悪化でさらに薬が増えるといった悪循環で、高齢者宅に大量の薬剤が見つかるケースが増えている。この「残薬」は、在宅の高齢者だけで推定500億円ともいわれ、医療費の膨大な無駄となっている。さらには薬局で薬剤を取り違えて処方する「誤薬」も、日本医療機能評価機構の調査によると、年間約1,300件発生していると報告されている。
「一般社団法人 日本安全服用協会」は、医薬品をめぐるこうした社会問題を克服するのが目的だ。法人会員・個人会員を募り、一般市民に対して問題の啓蒙活動を多角的に行っていくほか、薬剤師や看護職務の方などの現場リーダーや摂食・嚥下リハビリの専門医師・歯科医師らと協働し、薬剤師や看護師、在宅医療に関わる職業従事者などを対象にした「安全服用アドバイザー」資格制度を創設するという。第1回の募集開始は2016年2月を予定している。
協会は「活動を通じて、安全で快適に薬を服用し、薬剤本来の効能を享受できる社会の実現を目指したい」と話している。
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