宿泊施設を持たないホテル会社のAirbnb、タクシーを持たないタクシー会社のUber——この2社が逆説的な経済の先駆者だ。なかでも、Airbnbで宿泊施設として自宅を貸し出しているユーザーは、世界190カ国に及ぶ。宿泊先を探すユーザーは、世界で6000万人を超える。
既存の業者からの反発や行政の規制に遭うことも少なくないが、スマフォで気軽に支払えることから、消費者の支持は熱い。消費意欲よりも、コミュニティへの帰属意識が高いとされるミレニアル世代(1980年後半生まれ)にマッチしたサービスだ。シェアリングエコノミーの2014年度国内市場規模は232億7600万円(前年度比134.7億円)で、今後も成長が見込まれる。
だが、デジタルによる社会変革活動を研究しているトゥーッカ・トイボネン・ロンドン大学SOAS経営学准教授は、「労働条件が無視された働き方に課題がある」と指摘する。トゥーッカ准教授はオルタナSでの寄稿で、シェア系サービスのポテンシャルを評価した上で課題を説明した。
「(Uberの)ドライバーはUberの『従業員』と見なされないので、社会保障などの手当てを受けていない。Uberの巨大な利益は株主に配分され、遠くへ逃げていく。アメリカでは、労働条件を完全に無視する『On-Demand Economy』の象徴として批判されるようになっている」
シェア系サービスは、ITサービスが浸透し、インフラ化したことに順じて、活性化してきた。そのため、まだ広まりだして、日が浅い。トゥーッカ准教授は、「教科書もないほど新しい領域」とする。だからこそ、「先入観なしに新しいビジネスモデルを探っていくことで、デジタル時代の可能性がよりはっきりと見えるようになるはず」と期待を込めた。
ロンドンではアプリ「Fix My Street」を使えば、近所の道路の不整備や修理が必要なところを速やかに役所に報告できる。「TheGoodData」のプラグインを利用すれば、普段知らないうちに記録されている「消費者データ」が見えるようになり、そのデータが生み出すお金の一部が発展途上国に寄付される。「GovFaces」は政治家と有権者の意見交換を促進した。
トゥーッカ准教授は、これらのサービスが登場したことは下記のことを示唆しているとした。
(1)デジタルサービスが生み出した価値の大半は、それらが利用された現地に残すことが可能
(2)個人データ・消費者データは個人がより透明にコントロールできるようになる
(3)デジタルなプラットフォームが民主主義を直接的に支える、信頼度の高い道具にもなりえる
このように、社会的課題を解決するシェア系サービスのポテンシャルは高い。だからこそ、健全に発展させていくことがなによりも重要だという。
シェアリングエコノミー協会では、消費者保護などにも力を入れ、課題を解決しながら発展させていくことを目指す。19日のイベントでは、住民や有識者と、どのようにしてシェア系サービスを健全に発展させていけるのかについて話し合う。
シェア系サービスは日々、急速に浸透している。トゥーッカ准教授は、シェア系サービスを導入するための体制づくりは、「社会や経済にとって緊急の作業である」とし、危機感を募らせるが、「同時に面白いチャレンジでもある」とした。福岡でどのような議論が生まれるのか注目だ。
【SHARING CITY FUKUOKA 2016】
とき:2016年9月19日(祝)11:00~17:30
ところ:福岡SOLARIA PLAZA 1F 広場&警固公園住所:福岡市中央区天神2-2-43
参加費:無料
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