「ソーシャルビジネスしかやらない会社」と掲げるボーダレス・ジャパン(東京・新宿)は、バングラデシュに革工場を建て、現地で500人の雇用を生み出している。工場を建設した時は、スタッフは2人だけだったが、4年で250倍の規模になった。生産から販売まで、卸を介さず、すべて自前でこなすため、高品質な本革製品をリーズナブルな価格で提供している。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

バングラデシュの工場で指示を出す田口社長(左から3番目)と鈴木副社長(右端)

■「Business Leather Factory」・「JOGGO」が急成長

現在、工場では日本国内向けに、「Business Leather Factory(ビジネスレザーファクトリー、以下BLF)」と「JOGGO(ジョッゴ)」の2つのブランドの製品を製造している。どちらも2014年に立ち上げ、2016年度の売上高は合算で11億円に及ぶ。現地で501人の雇用を生み出している。

BLFでは17色86種類の製品を展開している。名刺入れは2999円、ビジネスバッグは1万7999円と価格はリーズナブル。シンプルで機能性の高い革製品を手頃に購入したいと思うビジネスパーソンの心を掴んだ。東京や大阪、福岡など国内7カ所に直営店を持つ。

オンライン専門のブランドであるジョッゴは13色のカラーバリュエーションからカスタマイズすることができ、無料で名前も刻印できる。ギフトに特化したブランドとして、幅広い世代から支持されている。本革の財布だと、1万3800円からオーダーメイドできる。

工場では現地住民を501人雇用している

一般的な革製品と比べて低価格だが、質にもこだわりがある。欧州で高級ブランドの革を取り扱う革なめし工場と直接契約を結んでいる。

バングラデシュの牛皮資源の豊富さも事業の拡大を後押ししてきた。同国では、年に一度「イード」と呼ばれる宗教的なお祭りが開かれ、国中の人々がアッラーに捧げるために、牛などの家畜を屠畜する。牛肉は大量に流通するが、残った牛皮は処分される。

この期間に処分される牛皮の量は、同国の年間の供給量の半分以上を占めるほど。この資源を生かして、製品づくりを始めた。

■1個単位から生産可

リーズナブルな価格帯を実現できる背景には、生産から販売まで、卸や販促会社を仲介させず、すべて同社が経営しているから。自社工場を持っていることで、小ロット生産も可能にし、1個単位からの注文も受け付けている。

同社の鈴木雅剛代表取締役副社長は、個々の要望に応えることができるこの柔軟な生産方式が、「経営戦略のカギ」と話す。色だけでなく、商品のレパートリーも豊富だ。ノートカバー、ポーチ、コインケースなども揃える。

雇用する上で大切にしていることがある。それは、「働きたくても雇ってもらえない人を雇用すること」だ。

面接では、履歴書は不要で、学歴や職歴も問わない。事業の目的が、同国の貧困問題を解決するためなので、特にシングルマザーや未経験者でも積極的に迎え入れる。

同国の他の工場と比べて1.2―1.5倍ほど平均賃金が高い。今後、出稼ぎに来ている人へ住居を提供し、工場内で託児所を設ける予定だ。

同社は2007年に創業し、韓国、台湾、バングラデシュ、ミャンマーにも支社を持つ。貧困農家の自立支援につながるオーガニックハーブティの販売や人種問題にアプローチする多国籍コミュニティーハウスの運営など9種類の社会的事業を行っている。社会起業家のプラットフォームを目指し、3月1日各事業を分社化し、体制を変えた。

*ボーダレス・ジャパンは、社会課題起点のビジネスを表彰する「グリーン・オーシャン大賞」で大賞に輝きました。グリーン・オーシャン大賞は、オルタナが法政大学イノベーション・マネジメント研究センターの協力を得て運営しています。そのほかの受賞企業は雑誌オルタナ48号(3月31日発売)に掲載されています。

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