オルタナは11月10日、CSRと電力調達を考えるセミナーを開いた。電力自由化から半年が経過したが、電力を切り替えた消費者は全体の3%ほど(電力広域的運営推進機関)で動きは鈍い。セミナーでは、自然エネルギーに抱いている「誤解」と、切り替えが、「責任ではなく企業価値の向上につながること」を発信した。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
同セミナーに登壇したのは、大石英司・みんな電力(東京・世田谷)社長、吉田明子・国際環境NGO FoE Japan「パワーシフト・キャンペーン」担当、三枝亮・ギンザのサヱグサ(東京・中央)社長、中多裕幸・ラッシュジャパン(神奈川県愛甲郡)アースケアマネージャー。ファシリテーターは森摂・オルタナ編集長が務めた。
■なぜ切り替える必要があるのか
「グローバリゼーションが進み、取得格差が広がるなか、企業のESG(環境、社会、ガバナンス)情報の発信が株価に影響を与えるようになったから」――。セミナーの冒頭、森氏は、企業が電力を切り替える必要についてこう説明した。パリ協定に触れ、企業はますます温暖化対策への動きが求められるようになっていくとした。
しかし、電力自由化から半年が経過したが、自然エネルギーへ切り替えようとする動きは鈍い。企業が切り替えない壁は何か。
吉田氏は「電力を価格で選んでいる事業者が多い。切り替えることで、企業価値の向上・ブランディングにつながるということを広めていきたい」と話した。FoE Japanでは、「パワーシフト・キャンペーン」を行っている。
電気から持続可能な社会を目指すことに賛同した団体と組み、自然エネルギーを供給する新電力会社をサイト上で紹介している。大手電力会社と比べて、中小規模の電力会社は広報予算が少ない。「切り替えるための具体的な情報を掲載している」(吉田氏)。
老舗子ども服ブランド「ギンザのサヱグサ」では、銀座を拠点に子ども服の販売を147年行っている。ビルの管理事業も行っており、このほど、銀座のアップルストアが入っているサヱグサビル本館を切り替えた。
同社の三枝社長は、「電気代は経営コストの一部だった。そのコストが、企業価値の向上につながると分かり、すぐに切り替えた」と話す。銀座に根差して企業活動を続けてきたので、「銀座の地域貢献の一環として、自然エネルギーを広げていきたい」と力を込めた。
国内に100以上の店舗と倉庫、工場を持つラッシュジャパンも切り替えを積極的に進めていきたいと宣言する。ビルオーナーではなく、テナントの一社ではあるが、「選べる自由があるということをオーナーに伝えたい。できる範囲から、切り替えていきたい」(中多氏)。
新電力事業(PPS)を行うみんな電力の大石社長は、「自然エネルギーへの間違った認識がある」とした。それは、停電しやすいことと料金が高いことの2つで、この誤解は、特に年配男性に見られるという。
電気の供給責任は送配電事業者が担っており、新電力と停電の因果関係はないと説明した。電気料金についても、多少高くなっても、自然エネルギーを選ぶ人が圧倒的に多いという。同社が世田谷区で実施したアンケートでは、「多少高くても自然エネルギーを選ぶと答え人が140人中、120人に及んだ。回答者の多くは、年配の女性や子どもたちだった。
今後、電力切り替えを進めていくためには、「費用対効果についての事例を積み重ねていくことが大切」とした。電気の仕入れ先を選ぶことは、「創造的である」と強調。
その理由は、「その地域でつくった電気を仕入れれば、電気を通して地域とのつながりが生まれる。『地域産の電気でできた商品』としてPRもできる。経営者には電気を切り替えることは、責任だけではなく、創造的行為としてとらえてほしい」と訴えた。
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