人口9500万人のフィリピンでは、生理用ナプキンの普及率はわずか32%だという。ナプキンを使えず不自由な生活を送ることで、勉強や仕事に取り組む時間を年間で50日、一生で5年間分失っている。この問題に対して取り組む一人の日本人が現れた。グランマ代表の本村拓人さんだ。「ナプキンを届けることで、女性の社会参加を促進したい」と本村さんは話す。(聞き手・オルタナS副編集長=池田真隆)
——フィリピン女性に生理用ナプキンを届けるプロジェクトを、クラウドファンディング「READYFOR?」で11月12日より開始しておりますが、どのようなプロジェクトなのでしょうか。
本村:フィリピンにおける女性の生理用ナプキンの普及率はわずか32%です。この問題に対して、生理用ナプキンを現地で製造・提供し、女性の社会参加を目指すプロジェクトです。
フィリピンの女性の多くはナプキンを使っていないことにより、教育の機会や働く時間などを失っています。その時間は、一生のうちに約5年間分になります。このプロジェクトを達成することによって、女性たちの社会参加と地域のエンパワーメントも促進していきたいです。
また、クラウドファンディングというコミュニケーションの場所を活かして、今まで途上国の問題に関心がなかった人たちにも知ってもらい、一緒に課題解決を目指したいと思っています。
——どのようにしてナプキンを届けるのでしょうか。
本村:従来の大量生産型ではなく、小規模分散型の製造プロセスを目指しています。ナプキンが不足している地域に製造機を設置することで、ナプキン不足の問題だけではなく、雇用も生み出します。
——ナプキン製造機一台を設置することで、どのくらいの雇用を生み出せるのでしょうか。
本村:一台で、約10人分の雇用が生まれます。今まで、収入がゼロだった10人が収入を得ることで、生活に変化を生み出します。
——期待している変化とは、物質的に豊かになることでしょうか。
本村:もちろん、物質的に豊かになっていくこともうれしいのですが、「想像力」を持つ人が増えていくことを期待しています。貧困から脱却するには、「想像力」が枯渇している状態を変えていかなくてはいけません。
経済的に不安定だと、想像力は限られてしまいます。このプロジェクトで雇用を生み出し、彼女たちの想像力を高めたいのです。
——なるほど。想像力が高まると、フィリピン女性はどう変わっていくと思いますか。
本村:自分の意思で何かに挑戦できるようになると思います。今まで、一方的に支援されて、選択肢すらも与えられていなかった彼女たちが、選択肢を持つことで価値観が変わってくるはずです。
先進国から途上国への一方的な開発支援や援助などのあり方も、変わることが求められています。
——自らの意思で行動する女性たちが社会に進出していくようになりますね。
本村:男性と同じ立場で働ける女性たちが増えていくことで、社会が豊かになり経済が活性化していくと思っています。
女性の強さは、男性よりも、「未来」に対する投資を重視しているところです。子どもを産む女性という存在は、誰の為に生きるのかが明確です。この価値観を強く持っている女性たちが社会に進出し、社会を豊かにしていく存在となることを目指しています。
READYFOR?で掲載中のプロジェクト「ナプキンをフィリピン農村部の女性に届けるプロジェクト」
本村拓人:
1984年東京生まれ。
2009年、株式会社グランマを創業。2010年に世界を変えるデザイン展を開催。その後、南アジアの塩害地域における水の浄化装置や、無電化地域へのソーラーランタンの設計・普及活動を日系企業と実施。2011年からは低技術でも普及可能なグラスルーツイノベーションに焦点をあてその普及活動に尽力している。現在、低価格で環境負荷の低い生理用ナプキンの発明家と共に製品、製造プロセス改善、マーケティング、及び地域に根ざした継続的な啓蒙活動を開始している。