ワタミは30日、九州大学ユヌス&椎木ソーシャル・ビジネス研究センターと協力し、一般社団法人ソーシャルビジネス・ドリームパートナーズ(東京・大田・代表理事渡邉美樹)を設立した。ソーシャルビジネスを展開する企業への投資・コンサルティング事業を行う。

調印式に向けて最終確認を行う。31日午前、日本財団(東京・港)で

31日には日本財団(東京・港)で、同団体代表理事の渡邉美樹・ワタミ会長や、グラミン銀行創始者で2006年ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス氏らが出席して団体設立の調印式が行われた。

同団体が支援するのは、ユヌス氏が提唱する「ユヌス・ソーシャル・ビジネス」である。ユヌス・ソーシャル・ビジネスとは、下記の7つの原則から成り立つ。

①経営目的は、利潤の最大化ではなく、人々や社会を脅かす貧困、教育、健康、情報アクセス、環境といった問題を解決する事である
②財務的・経済的な持続可能性を追求する
③投資家は投資額のみを回収できる。投資の元本を超える配当は行われない
④投資額を返済して残る利益は、会社の拡大や改善のために保留される
⑤環境に配慮する
⑥従業員に市場賃金と標準以上の労働条件を提供する
⑦楽しみながら取り組む

サインする渡邉代表理事

事業運営資金として、ワタミが1億円を基金として拠出する。今後の動きとしては、30日に開催された「みんなの夢AWARD3」に出場した温井和佳奈氏や他2〜3社への出資を予定しているという。

温井氏は、デザインを通してアジア人女性たちの自立支援活動を行う。「みんなの夢アワード」では、事業のソーシャル性が高く評価されたという。

もっともユヌスに近い日本人

組織構成としては、渡邉美樹代表理事のほか、理事にワタミの桑原豊社長、同社の中川直洋執行役員、さわかみ投信の澤上篤人会長、レオス・キャピタルワークスの藤野英人最高投資責任者、九州大学国際法務室の岡田昌治教授の5人である。

サインするユヌス氏

投資先に関しては、ベンチャーキャピタルを専門とする日本テクノロジーベンチャーパートナーズ投資事業組合の村口和孝ゼネラルパートナーを加え議論する。

岡田教授は、2008年からユヌス氏とソーシャルビジネスの普及推進活動を行い「もっともユヌスに近い日本人」と呼ばれる人物である。ユヌス氏が提唱するソーシャルビジネスの理念に合った団体に支援するため、岡田教授のみ「拒否権」を持つ。他の理事たちが賛同しても、岡田教授の賛同が得られなければ施行されない仕組みである。

企業は誰のものか

同団体が立ち上がった経緯を渡邉代表理事はこう話す。「昨年の夏頃にユヌスさんとお会いした。みんなの夢アワードのソーシャルビジネス部門の立ち上げに協力して頂けないかと提案した。その際に、ユヌスさんから、引き受ける代わりに、しっかりとソーシャルビジネスを根付かせるためにファンドを立ち上げないかと提案された」。

「正直、ソーシャルビジネスへの投資は、なかなか儲からない。しかし、夢がある。企業のCSR関係者に、寄付するよりも投資した方が社会的影響力があると証明して、ソーシャルビジネスの波を起こしたい」と渡邉代表理事は話す。

社会課題を追求しながら事業を継続させるソーシャルビジネスを実践するには、企業が何を目的とするかが重要になってくる。言い換えると、「企業は誰のものか」だ。株主のものか、消費者のものか、社会のものか。

ユヌス氏は、「企業は誰のものか」という質問に、「世の中の多くの企業と同様に、ソーシャルビジネスを展開する企業のオーナーシップも様々である。ソーシャルビジネスを実践する企業とそうではない企業の違いは一つ。それは、企業の目的が、企業の発展ではなく、社会課題を解決することである。そのような企業を支援していきたい」と答えた。(オルタナS副編集長=池田真隆)


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