電力自由化から1年が経つなか、電力を切り替えた消費者はわずか3%ほど。電力をコストとみなす企業は多く、自然エネルギーを選ぶために乗り越えるべきハードルは高い。そんななか、2020年までに全店舗の電力を自然エネルギーに切り替えると宣言しているイケア・ジャパン(千葉県船橋市)のヘレン・フォン・ライス社長は、「電気はコストではなく、価値観で選んだ。価値でつながることは、低コストで抑えることよりももっと大切」と訴える。(オルタナS副編集長=池田真隆)
■RE100は日本で増えるのか?
3月9日、サステナビリティと経営の統合を考えるサステナブル・ブランド国際会議2017東京で、「RE(自然エネルギー)100企業は日本で増えるか?」と題したセッションが行われた。
登壇したのは、イケア・ジャパンのヘレン社長とワタミファーム&エナジー(東京・大田)の小出浩平社長、みんな電力(東京・世田谷)の三宅成也取締役。司会は、国際環境NGO FoE Japanで「パワーシフト・キャンペーン」を担当する吉田明子氏。
RE100とは、事業運営を100%自然エネルギーで調達することを目指す国際イニシアチブ。現在、ネスレやナイキなど世界で87社が加盟している(2017年1月31日時点)が、日本企業はまだ0社だ。
■民間で自然エネを推進
家具世界大手のイケアもRE100に加盟している。イケアグループでは2020年までに全店舗の電力を自然エネルギーにすると宣言している。
2009年から自然エネルギー分野へ20億ドル以上の投資を行う。風力発電機を415機、ソーラーパネルは73万枚建設した。ヘレン社長は、「外部要因に頼らなくても、循環型のエネルギー社会をつくることを目指している」と話す。
2012年から風力発電に取り組んでいるワタミファーム&エナジーは、地域をキーワードに地産地消を進めていく。RE100については、「美しい地球を子どもたちに残すことがワタミグループのミッションなので、加盟を目指すことを創業者も同意している」とのこと。
小出社長は、自然エネルギーに切り替えるのにネックになっている要因はコストだが、「必ず価値観で選ぶ時代になるはず」とし、地域から変えていきたいと意気込んだ。
電力の生産者と電気を使う人をつなぐ顔の見える電力サービスを提供する、みんな電力の三宅氏は、「電気を選べる時代になったが、価格の安さで電力を選んでいる。電力の造られ方に無関心な人が6割ほどいる」とする。
同社では自然エネルギーへの切り替えを推進するが、安さの壁にぶつかると課題を話す。それでも、「電気の作られ方を知ることで、コストではない部分で選ぶ経営者が増えている」と手応えを話した。
司会を務めた吉田氏は、自然エネルギー事業者を紹介したウェブサイト「パワーシフト・キャンペーン」を紹介した。同サイトでは19社が掲載されている。吉田氏は、「日本の政策が原子力を維持・推進だとしても消費者の力で変えていきましょう」と呼びかけた。