社会問題に関心があるが、周囲に話せる人がいない。そんな人におすすめなのが映画の上映会だ。難民や児童労働、自然エネルギーなど社会派ドキュメンタリーを上映する「ソーシャル映画祭」の開き方とは。(オルタナS編集長=池田 真隆)

銀座ソーシャル映画祭で挨拶する西村氏(左)

東京・銀座にある製紙メーカーの中越パルプ工業は「銀座ソーシャル映画祭」を4年前から開いている。毎回、仕事終わりのビジネスパーソンを中心に20人ほどが集まる。11月8日には横乗日本映画祭と組み、48回目となる上映会を実施する。
 
この上映会を開いているのは、同社の西村修・営業企画部長。同社は年間80万トンの紙を生産するが、特徴的なのは、日本で唯一国産竹から紙をつくっていることだ。

きっかけは、工場がある地域のタケノコ農家から聞いた悲鳴。竹林整備で出た大量の竹を「なんとかしてくれないか」と頼まれて、この取り組みを始めた。1998年から生産を始め、今では年間2万トンの竹を紙に活用している。

竹は成長が早い。太陽の光を遮ってしまうなど放置竹林問題の解決を目指し取り組んでいる。同社にはCSR関連部署はない。西村氏いわく「ほぼ一人で」竹紙の取り組みを核にソーシャルグッドを発信しているという。

西村氏が「銀座ソーシャル映画祭」を開いた経緯はこうだ。当時、CSRを学ぶセミナーに参加しており、そこで大手電機メーカーのCSR担当者が社内への啓発の一環として、映画の上映会を開いていることを聞いた。

同僚たちに社会問題へ関心を持ってもらう方法を模索していたので、その話を聞いて実行したいと思っていた。そんな矢先、社会問題への意識が高い社会人らが集まる会合に出席した。そこで、自ら映画祭を開きたいと宣言したことで始まった。

上映会後の懇親会

西村氏の話を聞いた別の会社のビジネスパーソンが興味を持ってくれて、2人で映画祭の立ち上げを行った。一緒に企画したパートナーが集客力も、イベント運営のノウハウも持っていたことで、最初の1年間で9回開いた。

西村氏が「私の役割は場所を抑えるだけ」と明かすほど、そのパートナーに頼り切っていた。が、これから開きたいと思う人へは、「何もしなかったからこそ」のアドバイスができるとし、「一人だけでも、能力がある人と組むことで上映会は実現できるもの」と強調する。

2年目からは、そのパートナーが東京を離れたため、西村氏が中心になって、社外ボランティアの力を借りて開くようになった。「任せっきりにしていたが9回も開いてくれた。だから、絶対に年間9回以上開きたいと思った」とし、その言葉通り、毎年9回以上開いている。

上映会の映画は、ユナイテッドピープル社が市民上映会を開きたいと思う人向けのサービス「CINEMO(シネモ)」を利用している。同サービスでは、年間12万円を支払えば、200人までなら、対象の作品を上映し放題というプランがあり、それに申し込んでいる。

実は、銀座ソーシャル映画祭は中越パルプ工業の社員向けに始めた企画だが、参加者はほぼほかの会社に勤めるビジネスパーソンだ。

第一回目を開催したとき、少数だが同社の社員が上映会に参加した。だが、社外のボランティアスタッフらが準備のために会場内を走っているにも関わらず、ど真ん中でふんぞり返っている社員の姿を見て、「社内向けに開くのは辞めようと思った」と話す。

「いやいや来てもらうよりかは、社会問題への関心が高い真面目な人たちのために開くことにした。たぶん、真面目な人は会社で浮いてしまい孤立していると思う。そんな人たちが心置きなく話せる場作りに役割を感じた」

いまでは西村氏はほかの場所でソーシャル映画祭を開きたいと考える人へのアドバイスも行う。恵比寿ソーシャル映画祭(主催:ピープルフォーカス・コンサルティング、キャスレーコンサルティング)やシネマベリニ二子玉川(主催:シネマベリニ二子玉川実行委員会)、西新宿で開催している「ロータスシネマ(主催:NPO法人ロータスプロジェクト)」などだ。この先も背中を押すことで、新たな運営団体が誕生する見込みだ。

直近の上映情報は下記。11月8日第48回銀座ソーシャル映画祭「Persona」、11月16日恵比寿ソーシャル映画祭Vol.14「それでも僕は帰る」、11月22日第49回銀座ソーシャル映画祭「東北の新月」、11月25日シネマベリ二子玉川「ヴィック・ムニーズ/ごみアートの奇跡」「バベルの学校」、12月9日第15回ロータスシネマ「コスタリカの奇跡」「パワー・トゥ・ザ・ピープル」。

銀座ソーシャル映画祭
恵比寿ソーシャル映画祭
ロータスシネマ


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