伊藤忠商事は7月24日、東京本社で「夏休み環境教室」を開いた。同教室は1992年より開催しており、今年で27年目を迎えた。サステナビリティの重要性が増す中、同社の社会貢献活動基本方針「次世代育成」「環境保全」「地域貢献」に資するトピックを扱った。小学3~6年生約70人が参加し、SDGs(持続可能な開発目標)を学ぶワークショップや伊藤忠グループが販売・PRを手掛ける岩手県陸前高田市のブランド米「たかたのゆめ」を用いての田植え体験や科学実験を通して普段食べているお米について学んだ。(オルタナS編集長=池田 真隆)

黒ラブ教授は大喜利形式でSDGsについて説明。終始子どもの笑いが絶えなかった

夏休み環境教室は2部制で行われた。第1部は、国連が定めたSDGsについて学ぶワークショップ。ゲストには、東京大学大学院客員研究員でありながら吉本興業所属のお笑い芸人でもある「黒ラブ教授」を招いた。

黒ラブ教授は国立科学博物館が認定したサイエンスコミュニケーター。大学で学ぶ科学を中高生向けに分かりやすく伝える講演活動などを行う。今回は、小学生でも理解できるように、「エアコンの温度調整」や「エコバックを利用する」などの身近な例を出しながら、SDGsの17目標について説明した。

講演後には子どもたちから質問攻めに

黒ラブ教授の説明を聞いた後は、ワークショップ。SDGsの達成年である2030年の社会をどうしていきたいのか、17目標の中から達成に貢献したい目標を1つ選び紙に書いた。

SDGsを通して2030年の世界を考える

将来、保育士を目指す11歳の女の子は、目標16の「平和と公正をすべての人に」を選んだ。2030年を「平和な世の中にしたい」とし、個人としては、「身体に悪そうなモノやコトにはなるべく触れないようにしたい」と書いた。8歳の男の子は目標1の「貧困をなくそう」を選択。2030年の社会を、「貧困をなくし、問題のない世の中にしたい」とした。

黒ラブ教授は、「SDGsの目標は17個あり、どれもグローバル規模の深刻な問題なので、子どもたちが理解することは難しいと思っていた。だが、実際に伝えると興味深く話を聞いている姿が印象的だった」と感想を話した。実際、ワークショップでは、事前に120枚用意した紙が無くなるほどの反響だった。

■「たかたのゆめ」で理科教室

第2部では、陸前高田市の協力の下、JT(日本たばこ産業)植物イノベーションセンターの上岡博士を講師に招き、「陸前高田市ブランド米たかたのゆめ 理科教室」と題して、「たかたのゆめ」の田植え、脱穀、籾摺り、そして、精米体験と実験器具を使った「お米の不思議発見」実験を行った。

「たかたのゆめ」は、「いわた13号」という新品種米。伊藤忠商事は東日本大震災でのボランティアを通してできた陸前高田市との縁をきっかけに、2013年からこの品種米の生産から販売まで関わることに決めた。毎年、イベントなどを通して、PRを行っている。

今回、子どもたち一人ひとりに苗が配られ、コップにつくった「田んぼ」にその苗を植えた。その後、脱穀や籾摺り、精米作業も行い、どのような過程で稲穂からお米ができるのかを体験しながら学んだ。

人差し指でスペースを空けてから苗を植えた

10歳の男の子は自分が脱穀籾摺りをしたお米を観察しながら、陸前高田市農林課の熊谷氏に「このお米を持ち帰って、芽を出させることができるか、お米を育てるまでどれくらいかかるのか」と質問した。

「せんべいとおかき」「古い米と新しい米」の違いについて検査試薬などを使って実験を行った。一人ずつ、自分で実験を行い、検査薬で鮮やかに変化する様子を観察することで、「お米の不思議」を学んだ。

第2部冒頭、陸前高田市熊谷氏は、30年前と比べて今の日本人の米消費量が5膳から2膳に減っていることを説明した。参加していた子どもたちに聞いたところ、前日は1~2膳しか食べていないという子どもが多かった。2時間に渡りお米の勉強をする中で、おなかも空いて、夕飯はお米を食べずにはいられなくなった子どももいたようだ。

同社が社会貢献活動の一環として行う夏休み環境教室は今年で27年の歴史があり、重要なイベントとなっている。同社のサステナビリティを統括する代表取締役専務執行役員CAO・CIOの小林文彦氏も視察に訪れ、子どもたちを激励していた。

今年のテーマに「SDGs」と「たかたのゆめ」を選んだ経緯について、同社の中山氏は、「SDGsがターゲットとする2030年には、子どもたち自身も20歳前後と大人の年代になっている。一見難しく思える世界が抱えている課題を楽しく学びながら知ることによって、自分たちもそれに向けて何かができる、未来を変えていけるということに気付いてほしかった」と話す。

「たかたのゆめ」については、「都会の子どもたちは、普段あまり触れる機会のない苗や稲穂に実際に触れ、自分が食べるご飯になるまでの過程を知ることで、お米自体と、そしてそれを生産してくれる農家の方々への感謝の気持ちを持ってほしかった」と話した。


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