「社会福祉法人への就職」と聞くとどのようなイメージを抱くだろうか。メディアのネガティブな側面を誇張した報道により、負の印象を持つ人は少なくないだろう。就職先として考えると、「安定しているのか?」「給与はもらえるのか?」「そもそも就職できるのか?」など、親や友人、大学の先生から指摘を受けてしまう。社会福祉法人の魅力を探った。(オルタナS編集長=池田 真隆)

社会福祉法人で働く魅力とは

社会福祉法人とは、社会福祉法にもとづいて設立された法人である。高齢者や障がい者、生活困窮者、ひきこもりの子どもなどを支援する社会福祉事業を行う。法人数は全国に約2万あり、約87万人の職員が働いている。

非営利で公益的な活動を行うため、法人税は非課税。そのため、収益は全額福祉サービスに還元している。

災害時には、地域に福祉避難所を開設することが求められている。全国にある同法人のネットワークを生かして、支援物資の搬送や福祉の専門職派遣などを行う。

この領域では人材不足が深刻だ。介護に関しては、2025年には約38万人の人材不足が見込まれている。全国経営協が2015年に実施した調査では、1万人に社会福祉へのイメージを聞いた。その結果、「明るい」と答えた人はわずか4.6%で、「暗い」が10.1%だった。さらに、「社会福祉法人」の認知度も2割と低かった。

社会福祉へネガティブな印象を抱いてしまう背景には、社会福祉の現場の魅力を十分伝えきれていない現状があるという。全国社会福祉法人経営者協議会の広報戦略特命チームリーダーの大﨑雅子さんは、「高齢化先進国の日本社会では福祉のニーズは大きくなっている。未来の担い手を見つけることが喫緊の課題」と強調した。

昨今、働き方改革が騒がれているが、民間企業に比べて社会福祉法人のほうが職場環境は良さそうだ。「収益のすべてを福祉サービスへ還元するために定期的に行政の監査を受けており、労働環境が整っている」(大﨑さん)

さらに、テクノロジーの発達で、介護ロボットやIT化など福祉サービスを効率化するプロダクトが続々と開発され、積極的に導入され、働き方改革の取り組みも進んできている。従来は、職員の経験やスキルに頼っていた部分があったが、タスクをマニュアル化したことで、「現場が整理された」という。

厚生労働省の27年度の調査では、社会福祉士資格保有者の平均月収は26万円~34万円で、平均年収は330万円~470万円だった。キャリアパスを描ける法人として経営者は日々努力している。「先生や親御さんへ安心して働ける法人だと知ってほしい」と大﨑さんは強調した。

社会福祉法人「南山城学園」は毎年20人程度の新卒を採用している。同園の採用担当者である田中楓さんは、合同説明会や見学会、個別面談で伝えるポイントを変えながら話していると言う。

社会福祉法人では地域ニーズに合わせた活動も行うため、活動内容は多岐に渡る。行政だけでなく民間企業と連携することもある。そのため、多角的に社会福祉法人の仕事を説明できるのだ。

田中さんは現場で働くやりがいや魅力について、職員にも発信してもらうべく、任意組織を立ち上げた。入職して10年未満の若手を集い「GAKUEN 魅力発信チーム」を設立した。日々の業務で魅力に感じていることを自分の言葉で話せるように研修を行う。発信力を鍛えることで、職員自身が魅力を再確認できたという。


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