米国に本拠を置く巨大IT企業であるGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に対し、課税や規制強化を求める国際的な声が高まっている。今月8~9日福岡で開かれたG20財務省・中央銀行総裁会議では、GAFAの税逃れを防ぐデジタル課税新設に向けたOECD(経済協力開発機構)の作業計画を承認した。GAFAの何が問題で、規制のポイントはどこにあるのか。3人の識者に聞いた。(オルタナ編集部)
問題は「生活世界の植民地化」
神戸大学大学院経営学研究科の國部克彦教授は、「情報を伝達し、検索し、発信するという人間にとってもっとも基本的な生活世界は、すでにGAFAによって植民地化されている」とその問題点を指摘する。
「GAFAが所有する膨大な個人情報へのアクセス権の判断が、利用者からは隔絶された少数の人間に任されている……私たちの個人情報は、GAFAが登場したことで、すでに特定の人間に握られてしまっていると観念すべきである」
では、私たちはその状況にどう対処すべきなのか。國部教授は「GAFAの責任の究極は、ガバナンスに尽きる」と指摘し、こう述べる。
「私たちの生活世界に極めて大きな影響を及ぼしながら、そこに公式に意見を伝えて、議論する制度がないのは、非常に大きなリスクである……GAFAの規制は政府だけに任せるのではなく、政府を含めたステークホルダー全体の関与で進めるしかない」
暮らし方変える「ムーブメント」
一方、元グーグル本社副社長兼グーグルジャパン社長の村上憲郎氏は、所得格差の一因にGAFAがあるとしつつも、それを規制すれば問題が解決するという見方には否定的だ。
「批判すべきはGAFAではなく、租税制度だ。OECDを中心とした先進国で制度を改定する必要がある。制度ができてから、GAFAのコンプライアンスは改めて検証されるべきだ」
GAFAの狙いについて村上氏は「ライフスタイルを変える『ムーブメント』だ」と指摘。「暮らし方や働き方をより快適に効率化させ、その結果として、ディストラクティブな影響を他の産業に与えている」と述べる。
「富の集中」、社会が許すか
ITジャーナリストの佐々木俊尚氏は、GAFAに対しプライバシーの侵害という指摘が高まっている点について、「個人はプライバシーを提供することで、企業から使いやすいサービスがフィードバックされる」と述べ、「企業と個人は共犯関係である」ことに注意を促す。
また、GAFAは格差を生み出しているが貧困を引き起こしているわけではなく、違法労働や環境への負の影響を与えているわけでもないと指摘した上で、こう述べる。
「従来のCSRの枠組みでGAFAを見ることには無理があるのではないか。GAFAの社会的責任は、環境保護や格差対策ではなく、これからGAFAが富をどう社会に分配できるのか、その公正さをどう担保できるのかにかかってくる」
*この記事は、「オルタナ57号 特集:GAFAの社会的責任」に寄せられた3人の識者の論考をもとに構成しています。各論考について詳しくは本誌をご覧ください。
[showwhatsnew]