ラジオで、DJとしてしゃべってみたい。でも、専門学校に行ったことがあるわけでもないし、特別な知識を持っているわけでもない――――。そんな人でも気軽にラジオ番組に携われる放送局が、沖縄県名護市にある。その名も「FMやんばる」、沖縄県名護市から発信しているコミュニティラジオ放送局だ。(武蔵大学松本ゼミ支局=鈴木 志帆・武蔵大学社会学部メディア社会学科3年)

 

「FMやんばる」の上間社長

「FMやんばる」の上間社長

武蔵大学社会学部メディア社会学科松本ゼミは7月14日~18日までの5日間、沖縄県内のコミュニティFMの調査をするフィールドワークを行った。FMやんばるには、その調査の一環として訪れた。

FMやんばるの社長は、武蔵大学の卒業生。この放送局を立ち上げた経緯について、「地元である名護に手土産を持って帰りたかった」と語った。もともと名護市の出身で、幼い頃からずっと聴いていたラジオに憧れを持っていた上間さん。

大学を卒業した後は、那覇でサラリーマンとして定年まで働いた。その後、初代が高齢化し2代目は継いだり継がなかったりで、活気がなくなってきてしまった名護の街を元気にしたいという思いから立ち上げた。FMやんばるのスタジオがある建物の社長、名護市や名護の観光協会から支持を得て、他局のスタッフからもアドバイスをもらいながら、退職金で2009年から準備を開始し、2012年にFMやんばるを開局した。

番組を作っているスタッフのバックグラウンドはさまざま。現在、FMやんばるの4人のスタッフは、CMスポンサー取り、番組の制作、進行まですべてがオールラウンドで担当している。だが、スタッフ全員この放送局で働く前は、一般企業でサラリーマン、OLとして働いていた人がほとんどで、マスコミや放送を専門として働いていたというわけではない。一方で、番組に参加する50人以上の市民パーソナリティーも、中高生などの若者から高齢者まで幅広く活躍している。

そんな上間さんと、3人のスタッフ、そして市民パーソナリティーが作り出すラジオはバラエティに富んでいる。聞く人がくすっと笑うような、ほっとするような、勇気づけるようなラジオをモットーにしていて、政治や経済の話は一切なし。

丁度我々が取材に訪れた日は、地産地消をテーマにした35時間テレビの放送の真っ最中で、高校生たちがラジオブースでやや緊張した面持ちでマイクの前に立っていた。いざ放送が始まると、時々噛んでしまう。しかし、そんな場面があってもいいと上間さんは笑う。「いわゆるNHK、民放のような、作りこまれた放送ではなく、ありのままで放送することが大事だと思うんです」

そんな35時間テレビでは、高校生を中心とした市民パーソナリティーによるラジオ番組の放送だけでなく、地産地消の取組が行われていた。地元の素材だけを使ったカレーを1つにつき10円+チャリティー金額で販売し、市内の全保育園に、民話をベースにした手書きの紙芝居を送る。紙芝居を送るための段ボールは、地元へ呼びかけて集める。

地元の食材を使ったカレーを販売した

地元の食材を使ったカレーを販売した

FMやんばるのユニークな取り組みはこれだけではない。ラジオとリスナー、そして地元の商店街やお店をつなぐ、カード事業を始めた。FMやんばるのリスナーが、年会費・入会費無料のYANDO(やんどー)カードの受け取りを希望すると、YANDOカードと提携しているお店からプチサービスを受けられるというものだ。

提携するお店はFMやんばるに月額1700(税別)を支払うことで、番組内でお店の宣伝をしてもらうことができる。さらに、実際にお店に行った人の口コミなども紹介されるため、カードを持ったリスナーとFMやんばる、そして提携店がどんどん活気づくという仕掛けになってる。

筆者もこのカードを作ってもらったが、市内のエステでサービスが50%OFFで受けられるなど、都内に住む女子大生にとっても、嬉しいサービスがたくさんあった。市内に住んでいなくても、もし沖縄に来る機会があれば名護まで来て活用したい。

さらにFMやんばるでは、毎日夕方に明日の地方面というコーナーで、琉球新報の翌日のニュースを先取りしている。「詳しくは、明日の琉球新報で」といった、映画の予告編と本編のような具合で紹介するコーナーがある。

ただニュースを読み上げるのではなく、社長の上間さんによるちょっとしたエピソードを交えて紹介される。こういったコーナーを設けることで、ニュースをラジオで聞くという流れや、話題づくりのきっかけを作る狙いだ。こういった斬新な取り組みは、ラジオ放送が多い沖縄のコミュニティラジオ放送局だからこそできる取り組みなのではないだろうか。

開局から5年目を迎えたコミュニティラジオ放送局、FMやんばる。名護を元気にしたいという上間さんの思いは、少しずつだが地域に伝わっているように見えた。35時間テレビ放送や、多数の一般市民パーソナリティーの採用、リスナーとラジオと地元のお店をつなぐカード事業など、ユニークな取り組みをし続けるFMやんばるに、これからも注目していきたい。

・「FMやんばる」ホームページ 

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