9割5分の出版社が東京に集中する中、地域独自の本を出版している地方出版社。沖縄には1990年に創業し、30年を迎える「ボーダーインク」という出版社がある。「絶えず出し続けること」が地方出版社の役割と主張する。(武蔵大学松本ゼミ支局=鈴木 七海・武蔵大学社会学部メディア社会学科3年)
ボーダーインクでは90年代に、雑誌「WANDER」を発行した。コンセプトは、「サブカルチャー的な目線で見るとこう見える」。同誌の書き手は主に一般人だ。それぞれの視点で、コラムやインタビューなどの形式でまとめた。
しかし、95年9月に米軍少女レイプ事件が起こり、抗議運動が開始され、10月に8万5000人の県民集会が開催され、翌年に日米地位協定の見直し及び基地の整理縮小に関する県民投票が行われた。
これ以降、沖縄の若者の間でサブカル的な話題だけでなく政治的なことも話題にされるようになった。そのため、「暗い話は明るく、明るい話は重く」という従来の「WANDER」の編集スタイルが厳しくなってしまった。
沖縄の書き手がブログで情報を発信するようになったのも休刊の後押しとなり、2005年に「WANDER」を休刊した。
今後、沖縄の地方出版に期待される役割についてどう考えているのか。新城さんは「絶えず出し続けること」と述べ、インバウンドで沖縄を訪れる人向けに、さっと読める沖縄紹介の本が出来たらいいなとも語った。
実際、既に韓国では韓国語に翻訳された沖縄の料理本が発行されている。そうしたものに加えて絵本のような簡単な沖縄紹介の本やエッセイなどにも関心を持っている。
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