完全オーダーメイドのオリジナルウェディングブランド「CRAZY WEDDING」を運営するCRAZY(東京・墨田)はこのほど、同社が表参道で運営する結婚式場「IWAI OMOTESASNDO」で戸籍上同性同士の「挙式」を無料でプロデュースした。同社では、同性婚が法制化されるまで、この取り組みを毎年実施していく考え。企画した渡部恵理・プロデューサーは、「同性・異性関係なく、世界で最も人の人生を祝う企業になりたい」と話す。(オルタナS編集長=池田 真隆)
■公募したカップルの「誓いのセレモニー」を無料でプロデュース
同社では、ジューンブライドの6月、表参道で運営する結婚式場「IWAI OMOTESANDO」で、「CELEBRATION WEEK for all」と銘打ちキャンペーンを行った。
17日には女性同士の「誓いのセレモニー」を公開イベントとして行い、18日と19日には、同性同士の挙式を無料でプロデュースした。渡部さんは挙式のことを「誓いのセレモニー」と表現する。
同性同士が結婚する「同性婚」を法律で認めている国・地域は26カ国に及ぶ(2019年5月時点)。日本は同性婚が法律で認められていない国の一つだ。そのため、一緒に暮らしていても法律上は「同居中」と認識され、入院時の集中治療室への入室や遺産相続などが認められていない。
法改正の有無に関わらず、彼らの人生やパートナーシップを同性・異性関係なく、平等に祝いたいと考え、同社では、このキャンペーンを企画した。
■「人より多くの葛藤の中で生きてきた」
同社では創業から7年間で約1200組の結婚式をプロデュースしてきた。コンセプトをもとにして企画していくので、結婚式場だけでなく、廃校やキャンプ場、限界集落を会場にしたこともあり、文字通り「場所は選ばない」。
同社の特徴は、丁寧なヒアリングにある。結婚式を挙げる日を単に「お祝いの記念日」とするのではなく、これまで二人が歩んできた「人生」を祝うことを大切にしている。
そのため、パートナーの2人にはこれまでのライフストーリーをヒアリングし、そこからコンセプトをつくりあげる。コンテンツや装飾で、コンセプトを表現し、世界でたった一つの結婚式をつくり上げる。
キャンペーンを考案した渡部さんは300組以上の結婚式のプロデュースに関わってきた。「コンセプター」という肩書もあり、新郎新婦に、生い立ちから馴れ初めを丁寧に聞き、人生の「ストーリー」を編集し、コンセプトに落とし込む。
今回もKanaさんとMikiさんの「誓いのセレモニー」をプロデュースするにあたって、ヒアリングを行った。渡部さんは300組以上のカップルの話を聞いてきたが、同性だからといって「何も変わらなかった」と言い切る。
「一生ともに歩んでいきたいと思った相手が同性だったことで、人より多くの葛藤を抱えてきたお二人。お互い以外に話したことがない、という話まで共有をしてくださりました」と振り返る。
カミングアウトも悩みの一つだ。セクシュアルマイノリティーのなかには、偏見を恐れて、友人にも家族にも付き合っている人を明かさないと決めた人がいる。今回も、参列者なしで、2人だけで「誓いのセレモニー」を実施したカップルもいた。
渡部さんはいずれ、カミングアウトしたい人の背中を後押しできるようになればという思いを持つ。「一生をともに過ごしたいと思える大切な人に出会えることは、とても尊いこと。ここ(IWAI OMOTESANDO)がセクシュアリティに関係なく、大切な人に愛を誓える場でありたい」と強調する。
■レインボーパレードで意義を確信
同社ではこのキャンペーンを実施する前の4月、東京・代々木公園で開かれた東京レインボープライドに出展。巨大な白いベールをかけた、真っ白なステージを設置した。「シルエットだから見える愛がある。 誓おう、耳を傾けよう、大きな声と心で祝おう。」をコンセプトに、外側からはステージの中にいる二人のシルエットと二人の誓いの言葉が聞ける舞台を演出した。
当日は10組のカップルがそのステージの中に入り、お互いに誓いの手紙を読み合った。その様子を見ていた観衆のなかには、「同性どうしで式を挙げられたらいいね」と泣きながら拍手する人の姿もあった。この光景を見たことで、同社としては、意義を感じ、同性どうしの結婚式を開き続けることを決意した。
渡部さんは、「結婚式を挙げるなんて夢のまた夢と思っている人に、こういう形なら開けるかもしれないと思ってほしい。同性婚はまだ法律で認められていないが、だからこそ行う価値があると考えている」と話す。
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