アパレル大手ストライプインターナショナル(岡山市、石川康晴社長)が基幹ブランド「earth music&ecology」を立ち上げてから20年余りが過ぎた。当初から「エシカル(倫理的)」をコンセプトにしていたのは先見の明だが、この数年でようやく顧客の意識が追い付いてきた。石川社長はエシカルを掲げる目的は「ロイヤルカスタマー(優良顧客)」の開拓戦略だと言い切る。(聞き手・オルタナ編集長=森 摂、オルタナS編集長=池田 真隆 写真=飯塚 麻美)
*このインタビュー記事は第2弾となります。第1弾はこちら

インタビューを受けるストライプインターナショナルの石川社長

エコロジーをブランド名に入れたのは20年前

――主力ブランドである「earth music&ecology」は今年で立ち上げ20周年を迎えました。これまでの20年間の手応えの変化はどうでしたか。

石川:99年に立ち上げる前に、「21世紀に大事な概念は何か」を探していて、エコロジーを見つけました。当時はエコロジーという商標が取れたくらいですから世の中での認知度も高くありませんでした。

「エコロジー」から「エシカル」へ

ただこの20年間でエコロジーが社内や消費者にしっかり伝えられたかというと、正直、まだ中途半端な結果しか残せていないです。

コミュニケーションを「エコロジー」から「エシカル」に変えて、もう一回まずは社内から始めたいと思っています。

今年2月に開いた社員総会で1500人の店長やマネージャーたちの前で、「エシカル&ウェルネスが重要な経営戦略だ」と伝えました。これからは健康経営をしていかないとマネジメントリスクがあります。

プロダクトや調達もエシカルにしないと、消費者のリテラシーがどんどん上がっているなかで、「安かろう悪かろう」だと社会に叩かれてしまう。でも、CSRやエコロジーやサステナビリティをずっと言い続けてきた会社として、ようやく追い風が吹き始めたと感じています。

そもそもアパレルは大量生産・廃棄を繰り返すので、サステナビリティやエシカルとは真逆の業種だと思っています。

AIを活用し、仕入れ額を350億円削減

私たちはエシカルという概念を、ただオーガニックコットンを使うとか、脱プラスチックに力を入れるとかだけでとらえていません。業界では過剰在庫が問題になっています。当社はAIで売上予測を行うことで在庫の削減にも取り組んでいます。

昨年は1年間で1780億円の商品を仕入れました。今年はAIの予測によると1430億円だったので、昨年と比べて仕入れを350億円減らしました。AIの予測では、利益は2倍に上がり、売上はほぼ落ちないという予測が出ていましたが、さすがに350億円の買い付けを減らすことは大きな経営判断でした。

この計画は今年2月から実行していますが、上期に関しては、利益は前年比2倍を確保できました。

350億円の仕入れをやめることで、まず製造現場の負担を減らせました。そして、物流コストだけでなく、輸送にかかる二酸化炭素の量も減らせるので、かなりエコな意思決定ができたと思っています。

百貨店で販売しているようなアパレルブランドの廃棄率の世界的な平均値はほぼ50%。これに対して、私たちの廃棄率は平均で毎年0.2%です。この数値を創業時からキープしているので、周囲からは「異常値ではないか」と思われているほどです。

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石川 康晴(いしかわ やすはる)
株式会社ストライプインターナショナル
代表取締役社長 兼CEO
1970年12月15日岡山市生まれ。岡山大学経済学部卒。京都大学大学院経営学修士(MBA)。94年、23歳で創業。95年クロスカンパニー(現ストライプインターナショナル)を設立。99年に「earth music&ecology」を立ち上げ、SPA(製造小売業)を本格開始。現在30以上のブランドを展開し、グループ売上高は1,300億円、グループ従業員数は6,000名を超える。中国、台湾、ベトナム、インドネシアなど海外各国への進出も強化しており、国内外の店舗数は1,500店まで拡大。ファッションのサブスクリプションサービス「メチャカリ」や、ECデパートメント「STRIPE DEPARTMENT」、ホテル併設型グローバル旗艦店「hotel koe tokyo」など、最新テクノロジーを駆使したプラットフォーム事業・ライフスタイル事業にも注力。公益財団法人 石川文化振興財団の理事長や、国際現代美術展「岡山芸術交流」の総合プロデューサーも務め、地元岡山の文化交流・経済振興にも取り組んでいる。



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