IT大手ヤフーは8月28日、象牙製品の取り扱いを禁止することを発表した。同社が運営する「Yahoo!ショッピング」と「ヤフオク!」では11月1日以降、象牙と象牙製品の取引が禁止になる。象牙に取り扱いについては、楽天やメルカリ、GMOペパボなども先行して禁止にしていた。(オルタナS編集長=池田 真隆)
象牙は、1989年から国際取引が禁止されていたが、日本の国内取引については合法的に行なうことができる状態になっていた。国内で販売されている象牙・象牙製品は、国際取引禁止以前から国内にあるものか、ワシントン条約の下で例外的に輸入された在庫に由来するものと見られていたからだ。近年激化しているアフリカゾウの密猟の直接の要因になっているとは考えられていなかった。
しかし、環境保全団体WWFジャパンの野生生物取引監視部門であるTRAFFICの調査からは、日本から海外に違法に輸出されている象牙があることや、国内で合法性の証明が求められない製品の取引が盛んに行われていることが明らかになっていた。
2015年から実施してきたオンライン取引のモニタリング調査の結果、インターネット上で、違法な輸出につながる有害な取引が確認されたことから、WWFジャパンは、eコマース企業に対して、プラットフォーム上での象牙取引の停止を求めてきた。
この働きかけを受けて、2017年には楽天とメルカリ、2019年にはminneを有するGMOペパボが、先行して自社プラットフォームでの象牙の取り扱い停止や禁止措置の周知徹底を実施していた。
ヤフーは、ショッピングサイトとオークションサイトの両方を持っており、インターネットでの象牙取引の国内最大規模のプラットフォームとなっていた。
今回の決断は、日本における野生生物の違法取引の課題解決のために前進となる。WWFは、「国際的に象牙取引の政策強化が進む中、同社が取引継続のリスクを十分に考慮し、自主的に判断を下したことを歓迎する」と評価した。
日本政府の対応の遅れが指摘される中で、こうした取り組みは、政府の政策促進の後押しになることが期待されている。
8月17日~28日にかけてスイスで開催されたワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)第18回締約国会議では、象牙の国内市場を維持している国に対して、密猟や象牙の違法取引の要因となることを防ぐ対策の実施状況の報告を求める決定が合意された。違法輸出や国内規制の問題が指摘される日本には、国際的にも強い関心が向けられている。