「誰のために動いているのかを意識できている人は長く活動を続けている」――そう話すのは日本最大の復興支援学生組織であるNPO法人Youth for 3.11(ユースフォー311 以下ユース)の河合信哉代表(埼玉大学理学部3年・21)だ。行動を起こす対象を具体的に見えているのかを、常に自身に問いかける。東北へ学生を送る中間支援を続けてきたが、河合代表の原動力は、地元静岡市民のためがある。(オルタナS副編集長=池田真隆)
河合代表が初めて東北に訪れたのは、2011年の夏だ。埼玉大学に入学したばかりの頃、計画停電の影響で夏季休暇が2週間早まった。時間があったので、ネットで検索していると偶然同団体の存在を知ることに。
時間が余っていたこともあり、ボランティアに行く事を決める。行き先は気仙沼。まだ震災が起きて4カ月ほどだったので、食糧や生き物が腐敗した匂いが充満し、瓦礫処理が整理されていない状態だった。
復興支援へのモチベーションが出たのは、ボランティアから帰ってきたときだ。ボランティア後に、実家がある静岡県焼津市に寄った。実家は海の近くで、幼い頃は家で水着に着替えて30秒後には海で泳いでいた。
実家に戻り、いつも通り、海へ向かうと、途中の道に海抜を示す標識が新設されていた。そこには、「海抜8.1m」と表記されていた。
この数字を見たときには、河合代表のスイッチが入る。「もし、東日本大震災のときのような津波が来たらどうなるのか。家も何もかもが流される」と一気に恐怖感を感じたのだ。
こうして、地元静岡市民へ防災の意識を啓発したいと思い、ユースの活動に加わった。団体に所属して、約2年が経過した今、代表の重責を担うまでになった。
同団体は東北やボランティアの派遣を要請する地域へ学生たちを送り込んできた。東日本大震災以降、延べ人数では1万5000人の学生がユースを通じて東北でボランティアを行った。
ボランティアに興味のある学生や若手社会人が加入しているメーリングリストも所有し、約1万3000人が登録している。これまではそこにボランティア情報を流していたが、今後は求人情報も広報していくことを検討している。
「社会のためにと動き出した学生と、ソーシャルな志向を持つ企業をつなげあわせればと思っている」(河合代表)
東日本大震災以降、河合代表は10回弱ほど東北へ行った。さまざまな復興支援組織を見てきたが、「誰のために」をより具体的に見えている団体は動き方が違うと言う。
「よく、『社会のために』という言葉を使うが、社会は人でできている。なので、その人のことを見えていることが大切。東北が好きになるのも、結局は東北の人を好きになっていること」と話す。
河合代表が活動を続けるモチベーションにも、「地元静岡の大切な人たちのため」という思いがある。