日本財団学生ボランティアセンター(Gakuvo)はこのほど、「PR力コンテスト V-1」の第9回受賞者を発表した。V-1では、ボランティア活動を経験した学生がPR力を競い合った。「自身のボランティア経験と学んだこと、社会に発信したいこと。」というテーマで作文を募集し、グランプリには梶風希さん(立正大学 地球環境学部 地理学科2年)が輝いた。(オルタナ編集部=多田野 豪)
同コンテストは、学生が取り組む社会課題や活動の意義を発信する力を身に着けて、活動の活性化・発展につなげていって欲しいという想いで、Gakuvoが2010年から開催している。
今回グランプリを受賞した梶さんは、台風19号で甚大な被害をうけた福島県いわき市でのボランティアで経験したことや学んだことを応募した。
審査員の杉本 昂熙氏(学生団体おりがみ東京支部代表)は、「自己満足を契機として参加したボランティアで出会った人の話を通して、人との繋がりの大切さに気づいていく心境の変化が伝わった」とコメントした。
梶さんの全文は下記
泥を見ずに、人を見る
立正大学地球環境学部地理学科1年 梶 風希(かじ ふうき)
私はこれまでに、二回の災害ボランティアに参加した(2020年2月18日現在)。二回とも台風19号で甚大な被害をうけた福島県いわき市での活動だった。
なぜ私がボランティアに参加したか。被災された方のために何か力になってあげたい、というのは表向きの理由で、本当の理由は、ボランティアしている俺って偉い、すごいですアピールをしたいといったなんとも不純な動機である。もちろん助けになりたいという気持ちはあるが大きなウェイトを占めるのは後者だった。最初はそんな動機で参加したが一回目の活動を終えるとボランティアに対する姿勢が変わった。
一回目の活動は屋内の作業で、主に床下の泥かき、家財道具の運び出し、清掃を行った。活動場所に着くと意気込み十分で、重い荷物を運び、清掃活動を一生懸命行った。しかし、仕事がなくなると、手持ち無沙汰になり、落ち着かなくなった私は家の持ち主の方に「なにか仕事ありませんか?」と仕事したいアピールをしていた。そんな私を見ていた先輩が、「あまり聞きこまない方がいい。被災された方のやり方がある。積極的に聞くのはかえってストレスになる」と教えてくれた。ハッとなった私は自分勝手な行動に後悔した。
この反省を次に活かしたいと思い、二回目のボランティアに参加した。そして、プログラムの中に、ボランティア活動をたくさんしてきた長源寺副住職の栗山さんの講演を聴く機会があった。栗山さんは「泥を見ず、人を見る」という言葉を教えてくれた。意味は、被害のあった場所を見るより、被害にあった人と会話をする方が大事ということだ。この言葉を前回の私の行動に照らしてみると「泥を見て、人を見ず」。まさに反対のことをしてしまった。また、人の心に寄り添う傾聴が大事ともおっしゃった。ボランティアは作業をたくさんこなすのではなく、会話をして人の心に寄り添うことが大事なのだと気付かされた。
次の日から、いろんな人と会話をしようと心がけた。そしたら、いろいろな発見をすることができた。仲間との会話では、一見初対面の人とでも実は繋がりがあって、他大学の人とは連絡先を交換し、これからも交流できるようになった。被災された方との会話では、詳細な被災状況や農業の知識、土地のことなど深い会話ができた。それにともなって自分の知識も増えた。このことから会話することの重要性を感じた。会話はボランティアだけでなく、自分の日常生活に必要でかつ大事である。会話をせずに生きていく人はおらず、また会話をすればいろんな情報をつかむことができ、たくさんの可能性が生まれる。
二回のボランティアしか参加していないが、どちらの活動も私に大切なことを教えてくれた。ボランティアは他人のためにしてあげるという考えが濃厚だが、実は自分に向き合う機会をくれ、自分のためになるものでもある。ボランティアは私を成長させてくれる。これからも自分自身を成長させていきたいと思う。
【こちらもおすすめ】
・「ボランティアが参加資格」ライブ考案者
・ごみを「拾わない」ボランティア
・ミスキャン、ボランティアの思い出は