の続き

広田町に集まる理由

佐々木「なんで帰ってきたかって言われるとこれといって理由はないんだよね。ただ、こんな大変なときに帰らないでいつ帰るのって感覚かな。こっちきての仕事とかはそんなのどうにでもなるって思ったし、とにかく今は広田が大変なとき、だから帰った。ただそれだけ。」

藤田「おれもそうなんだよね。ここに残り続ける理由もとくにないんだ。ただ自分がこのような役職にいるからとかなのかなって思うけど、それでもないんだ。おれは9時から16時で働いてくださいって言われてるけど、今は休みも取らずに毎日たくさん働いてる。別にそんなに働かなくてもいいんだけど、なのになんでこんなに働いているのかって言われると、やっぱりそういう人たちを見てきたからかな。もし、そういう人たちの姿を見てなかったらおれはここまで働けてたかはわからないな。」

三井「おれらがここを支援先に選んだのは縁なんですよね。当初はみんつなの人と一緒に4月6日に陸前高田に現地入りしてみんつなの人から特に広田地区がひどいからそこをやってくれないかって言われたのがキッカケですね。最初にここを訪問させて頂いたときは藤田さんから追い返されたんだけど、やっぱりここが気になってて諦めずに残り続けたんですよ。そして、今はこうして受け入れてもらって現地の人たちと直接お話しさせて頂いてる。こういうのって普通のボランティアではないんですよね。通常のボランティアでは現地のかたと交流しないでボランティアだけでただ瓦礫拾いや泥かきをすることが多いんですが、おれらはいろいろなことを現地の人と一緒に経験させてもらって学ばさせてもらってる。こういう言い方は失礼かもしれないんですけど、自分にとっては楽しいんですよね。」

藤田「最初はこっちも君らをどう受け入れるか結構悩んだんだよ。やっぱりこっちには被災者もいるわけでね。でも、結果的に今は結構笑ってられる。にぎやかだよね。」

佐々木「やっぱり若い子がいると違いますよね。」

藤田「それが一番良かったんじゃないかな。大人だけで進んでも子供たちが付いて来ないし、だから君らみたいに若い子がいると場もにぎやかになってわれわれ大人と子供をつなげる役割を果たしてくれる。にぎやかにしてるから子供たちが近づいてくるしね。」

佐々木「そうですね。ほんとに。おれらが楽しくやれるようになったことはいいと思います。」

三井「それ聞いて安心しました。やっぱりおれらはまだ学生で若くて何の専門性も持ってないから、迷惑かけるだけだから学生が現地に行くなよって言う人たちもいるんですよ。ただ、私たち自身はそんなことはないと思ってて、おれらだから届けられる元気とか笑顔とかがあると信じてて、いまこうして話し聞いて二ヶ月走り続けてきたかいがあったなって思いました。」



今伝えたいこと

藤田「おれはこの震災があってほんといろいろな人を見て、たくさん勉強させて頂いた。それで最近思うことはこの被災現場を見て欲しい。いまはラジオとかで被災地にむやみやたらに行くなって言われてるけど、おれは見に来てほしい。というのも自分の目で見て感じたものってのは生涯忘れないから。もちろん、自衛隊や警察の人たちが働いているところを写真撮るのはいけないと思うんだけど、邪魔にならないところで見てるのだったらいいと思う。見て何かを感じてここを忘れないでほしい。」

佐々木「おれも見に来てほしい。あと、今回破壊された家や建物は何年かすればもとに戻るかは別として、必ずどうにか復旧はできるんだよ。でも、忘れちゃいけないのは自然はそう簡単にはもとに戻らないってこと。沿岸部は海の仕事が上手くいってその人が町に出て買い物して、町全体が栄える。だから、早く海をもとどおりに奇麗にしないといけない。津波は海の底からひっくりかえるから海が汚くなって魚がよってこない。それに今度居住区を高台に移すとき山の木を切る、そうすると自然のバランスが崩れ、山が川を奇麗にして、川が海を奇麗にする循環が壊れてしまう。沿岸部は自然、とくに海が戻らないと元には戻らない。」

藤田「そうだよね。全部がつながっていかないと復興にはならない。」

佐々木「あとは、見に来て何かアクションを起こしてほしい。寄付するのもいいし、何か東京でチャリティイベントを開催するのだっていいと思う。そのようにアクションを起こせるのは高齢者じゃなくて君ら若者。若いやつが動かないと社会は動かないんだから。もう酒とか花火大会とかのイベントの自粛はいいから。」

藤田「それはおれも思う。自粛は意味ない。だってこっちの酒がそういうイベントで使われて、ここの酒蔵から酒がなくなればこっちの人はまたなんとかして酒作る。お客さんがいるからこそうちらは続けていける。こっちの酒蔵で酒がいつもあまってるよりかはいいに決まってる。飲みたい酒も我慢して復興を願ってますなんて言われてもこっちにとってはありがた迷惑だよ。だからもう自粛はいいと思う。」

佐々木「どんどん経済循環を回していってほしい。それにいろんなところでうちらの作ったものが使われてるのを見ると励みになるし。」

藤田「そうそう。どんどん酒飲んで、大いにやってほしい。」


 

 

 







収録を終えて、、、

広田のかたとお話しをさせて頂いて感じたことは、なによりも先祖から受けたものを意識していること。私たちは「今までになかったものを作ること」や「ゼロから1にすること」に価値を強く感じている傾向があるが、彼らの場合価値を持っているのは先祖から受け継いできたものを次世代へ伝えることではないだろうか。

自分一世代で何かを成し遂げる人を否定しているわけではないが、彼らのように毎日畑や海に出かける姿勢からは何世代も前から受け継いできたものを守り続けている誇りが感じられる。

船はこの世界にたくさんあるが彼らが乗っている船はどれも替えが利かない、何世代も前から受け継がれているその船じゃないといけないのだ。彼らは自分ひとりではなく先祖の意志とともに大海へ船を出すのである。


池田真隆(オルタナS編集員)