都心から電車で約2時間のところにある千葉県いすみ市。のんびりとしたこの地で昨年から暮らしている畠山千春さん(26)に、サステナブルな生き方のヒントを聞いた。




会社ごと田舎へ移住
畠山さんが勤めるユナイテッドピープルは、映画配給やNGO/NPO支援を行っている会社。昨年3月、”本当の豊かさ”やローカリゼーションをテーマにした映画『幸せの経済学』を配給する際に、自分たちも地域に密着した生活をしよう!と、会社ごと千葉へ引っ越すことに。それまで都市で暮らしてきて、抵抗はなかったのだろうか?

「会社に入る前から田舎に引っ越すよと言われていたので、全く抵抗はありませんでした。むしろ楽しみ!という感じでした(笑)」と話す畠山さん。その原点にはカナダでの体験が大きいようだ。

おしゃれ=ライフスタイル
学生時代、就職活動に疑問を感じてモヤモヤとしていたとき、留学から帰ってきた友人の話を聞いて自分も留学してみようとカナダへ。その中でも異文化に興味があったので、様々な人種の集まるトロントを選んだ。

そこで肌の色も宗教も異なる人たちと触れるうちに「外見で人は判断できない!」と気がついた。もともとファッションが好きで“おしゃれ=ファッショナブルな人”だと思っていたが、「内側から出てくるものや、自分の考えで生きている人こそかっこいい!」と思うようになったという。

就職のヒケツ
新たな価値観とともに帰国後、greenz.jpサステナの活動に携わった。そこで現在勤めている会社の社長と偶然出会ったそう。そして話はとんとん拍子で進み、インターンをすることになった。
「ちょうど人が足りなくなる時だったみたいで、タイミングが良かったんですね」。

とは言え、なかなか簡単に入れる会社ではないはず。
「狙っている会社があったら、新卒採用をしていないからなどとあきらめずに何度もアタックすること!その会社の人が参加するイベントなどに顔を出すなどして、いつでも手を挙げられるように準備しておくことが大切」。


都市より100万倍幸せな田舎生活
畠山さんが住む中滝アートヴィレッジは、畑道に突然現れる森の中にある。森には15軒の家のほかにカレー屋さん、スタジオなどがあり、音楽フェスが開催されることも。

畠山さんが住む、森の家


「ご近所さんとごはんを食べたり、仕事をしたり。自分の生活を支えてくれる人が周りにいて、そしてみんな同じ方向を向いていて、満ち足りた幸せを感じる。これからは地域でつながっていくことが大切だと思う」と話す畠山さんに、以前の生活と比べてどうですか?と聞いてみると「100万倍幸せ!」と笑顔たっぷりで答えてくれた。

「田舎の生活って昔に戻る、みたいなイメージがあるけど、私は都会より最先端だと思う。例えば満員電車に乗る必要もないし、星や景色はきれいだし、家も広いし、人があったかい。都会暮らしをしていたときにずっと探していたものが、ぽんぽんと手に入ったんです」。

シェアする暮らし
その一方で、買い物など不便なことはないのだろうか?と疑問に思ったが、ほとんどのものがネット購入できるので問題ないという。移住前も留学中も、そして現在もルームシェアをしていることもあり、“シェアすること”に慣れているようだ。

「東京にいると物をそろえたくなるけれど、ここでは足りないものはご近所さんに借りればいいし、借りたらお礼にお菓子をあげたりしてまた交流が深まる。田舎の生活はパーフェクトじゃないけど、物を持っていなくても不安にならない」。

こうした今の生き方に行きついたのは、“自分に気持ち良いかどうか”を大切にしてきたからだという。これは、自分が納得できるかどうか、とも言えるだろう。例えば毎朝、満員電車に乗ることを受け入れられるか。すべての行動は自分の選択次第だ。

学生にも“自分に気持ち良いこと”を大事にしてほしいと話す。
「3.11を通じて、今までの『当たり前』が実は全く『当たり前』じゃなかったことに気づきました。今は、お金の価値や暮らし方・働き方など世の中の価値観が大きく変化する時代。自分らしく生きていくためには、世の中の『当たり前』にとらわれず、自分の頭で考え“自分に気持ちのいいこと”に忠実に行動していくことが大切になるのでは」。

「足るを知る」

将来は離島に住み、中滝アートヴィレッジのようなコミュニティを作りたいそう。
「ここではすべては自分次第。より等身大でいられるし、自分の身の丈に合った幸せの大きさを今も探しているところ。全員にこの暮らしをしてほしいとは思わないけど、したくても無理だよなーと思っている人に伝えられたら嬉しい」。

3.11以降、自分の力で生きていくことの必要性を感じた人も多いはず。畠山さんのライフスタイルからは、私たちも見習うことがたくさんありそうだ。


畠山千春

1986年生まれ。法政大学人間環境学部卒業。
カナダ留学後、ウェブマガジンgreenz.jpインターンを経て、NGO/NPO支援・映画配給事業を行うユナイテッドピープル株式会社に就職。2011年3月、半農半Xのワークスタイルを目指し千葉県いすみ市に会社ごと移住。中滝アートビレッジで暮らしながらオフィス隣の小さな畑で野菜を育てる。
大の旅好きで、オーストラリアのエコビレッジ・インドのラダックなどを訪問し、サステナブルな暮らしを学ぶ。最近は「いのちを感じるワークショップ」を企画し、動物の解体にも挑戦している。
ブログ : ちはるの森
twitter: @chiharuh