タイトル:電園復耕~大通りからそれて楽しく我が道を歩こう

なぜ人を押しのけて狭き門に殺到するのか?自分を愛し迎えてくれる人たちとの人生になぜ背いて生きるのか?
この書き下ろしは、リクルートスーツの諸君に自分の人生を自分で歩み出してもらうために書いた若者のためのお伽話である。(作・吉田愛一郎)

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◆森のレストラン

「I’m running away from Fukushima to the place where there is no放射能」と女が言った。
「放射能 reach up to here?」
啓介は答えた。
「I don’t think so」
それから末広に向かって「放射能はここまで来ませんよね?」と大声で尋ねた。
「ここまでは来ねえだろう」
末広が答えた。女は末広の方を向いて「Are you sure」と言いながら「Oh Horses」といって顔を明るくした。
「Do you like horses?」
「Yes, I do very much」
女は車を停めて降りてきた。襟を立てたピンク色のブラウスの襟のボタンが上から三つはずれ、日焼けしたそばかすの多い胸がはだけていた。ジュリーアンドリュースとの違いは、日に焼けていることと、豊かな髪の毛が肩で波打っている事だった。
女は道端の牧草を引き抜いてグリニッシュに与え、首筋をパタパタと叩いた。
「You like riding」
末広が言った。
「スキデス」女が日本語で言った。
「俺の事がか?」
末広が自分を指差して言うと
「First horses and second may be you」と女は言い、声を上げて笑った。
「手伝ってくれ、手伝うHelp わかるね?I will give you breakfast」
「OK」
女は嬉しそうに笑った。
「じゃあこれ頼む」末広が女に引き綱とワイヤーブラシを渡して「ウォッシュ フット」と言って、脇を流れる小川を顎で示した。女は「clean hooves you mean? 蹄の手入れの事?」と聞き返したので、啓介は「I think you are right」と言った。

女はグリニッシュの首筋を何度か優しく叩いてから、馬の頭絡に引き綱をカチッと掛けて、チッチと舌を鳴らして引き綱を軽く引くと馬は女の方へ歩き出した。女は啓介に「Take another」と言って先に歩きだし、小川の淵で、引き綱を片足で踏みつけると、もう一方の脚を持ち上げて履いていたスニーカー(濃紺のサッカニージャズ)を脱ぎ、コットンソックスも脱いだ。同じようにしてもう片方の靴下と靴も脱ぐとラングラーのジーンズを少したくし上げて、踝程まで水に入ってから、グリニッシュにまたチッチと大きめの舌打ちをして馬を水の方に引いた。

馬は首を立てて水に入ることを拒んだので、女はチッチチッチチとさらに大きく舌打ちをして綱を強く引くと、馬は右足を小川に浸してから、腰を低める様にして左足を水に入れ、前に進んで小川の上流に向かって四肢で立った。女は馬を更に上流に誘ってイースターの為に場所を空け、ワイヤーブラシで馬の蹄の泥を落している。

啓介も女の下流に馬を下ろしたが、イースターは引きもしないのにグリニッシュと同じことをして自ら水に蹄を浸した。「It’s first time
For me」啓介が言うと「You are too good. Is it realy first time?」と女が低く甘ったるい調子で聞いてきた。アメリカ南部のアクセントだった。

初めてのセックスの相手が大年増だとこんな会話になるのかなと思ってドギマギしてしまった。末広の声がした。「犬と馬と一緒にみんなで朝飯を喰おう」「We all eat breakfast together OK?」末広が犬と馬二頭とと女と啓介を順番に指さして言った。
女は怪訝な顔をして「Yha」と小さく言った。
啓介は動物三頭と人間三人でどうやって一緒に朝飯を食べるのか良くわからなかった。

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文・吉田愛一郎:私は69歳の現役の学生です。この小説は私が人生をやり直すとすればこうしただろうと言う生き方を書いたものです。半世紀若い読者の皆様がこんな生き方に興味を持たれるのであれば、オルタナSの編集スタッフにご連絡ください 皆様のご相談相手になれれば幸せです。

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